古代ギリシア神殿建築様式の一つ。イオニアで発生し,優雅な軽快さを示す。円柱はまるい台座を持ち,エンタシスはきわめて軽微で背丈が高く,溝彫は深いが溝と溝の間に平縁を残し,枕形渦巻の柱頭を持つ。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
出典 旺文社世界史事典 三訂版旺文社世界史事典 三訂版について 情報
…彼らは建築の構成要素の中でも特に円柱を重視し,その柱身基部の半径を1単位とし,その倍数を用いて柱の高さや柱間寸法,その他各部の寸法を定めるという,ちょうど日本における木割術のような方式を創り出した。ギリシアの円柱形式には,古い木造建築時代の形をとどめるといわれる重厚なドリス式doric order,小アジア起源の優雅なイオニア式ionic order,前5世紀ころに現れた繊細華麗なコリント式corinthian orderの3種があり,それぞれに特徴的な柱頭(キャピタル)と装飾細部をもっていた。ギリシア人はこれらそれぞれの性格に見合った寸法比例を,さまざまな実験を経ながら定着させていき,前4世紀ころまでには,円柱の形式と柱径,それに柱間数を定めさえすれば,ほとんど自動的に神殿全体の形が構想できるほどになった。…
…ギリシアのアッティカ式,ローマ数字もこれに近い。ギリシアのイオニア式は各数ごとの記号は少なくてすむという点では優れているが,各桁ごとで記号を変えているので,たくさんの記号を用意しなければならず繁雑である。中国では算木による記数法も用いられた。…
…エンタブラチュアの形は,初期の木造屋根の構造に由来している。発端となった建築伝統が地域によって違っていたため,ギリシア本土やイタリア南部などではドリス式と呼ばれる建築が,小アジア西海岸ではイオニア式の建築が,並行して発展した。 ドリス式では円柱に20本の浅いフルーティングをつけ,フルーティングの境は鋭い稜線をなしている。…
…もっと大きな神殿ではその周囲に吹き放しの柱廊がめぐらされて周柱式(ペリプテロス式)となり,ときには二重に列柱がめぐらされる二重周柱式(ディプテロス式)も見られる。建築の様式は,地域によってドリス式(ギリシア本土,イタリア南部など)またはイオニア式(小アジア西海岸)が採用され,ヘレニズム・ローマ時代にはコリント式が多くなった。ドリス式の周柱式神殿では正面6柱(側面は11~17柱)が普通であるが,イオニア式では正面8柱になる傾向がある。…
…ギリシア・ローマでは,円柱の形状と各部の比例が研究され,オーダーが生み出された。ギリシア建築のオーダーには,柱頭が皿形をしたドリス式,渦巻形装飾(ボリュート)をもつイオニア式,アカンサス葉装飾をもつコリント式の3種があり,ローマではさらに,柱身に縦溝(フルーティング)をもたないが他はドリス式に類似したトスカナ式,そしてイオニア式とコリント式の柱頭を合体させた形状のコンポジット式が加えられた。これらの柱はいずれも上部にいくに従って柱身が細くなる(エンタシス)が,ギリシア以前のクレタやミュケナイの建築にみられる柱は上が太くなる円柱である。…
… これら抽象的・象徴的比例観に対し,古代ギリシア人は比例を形態美の源泉とみなし,生物的形態,とりわけ人体が,もっともよく宇宙的調和を体現した比例をもつものとして,それを建築にあてはめた。円柱はそのまま人体になぞらえられ,たとえばドリス式円柱は男性の人体であり,その高さは直径の6倍とするのが望ましく,イオニア式は女性で,直径の8倍の高さがよいとされた。そして円柱直径の1/2を1モデュールと呼び,各部寸法をすべてこれの倍数値で表す方式が,いわゆる〈オーダー〉の体系の根幹となっていた。…
※「イオニア式」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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