デジタル大辞泉
「エンタシス」の意味・読み・例文・類語
エンタシス(entasis)
古代ギリシャ建築の柱に施された、ゆるやかなふくらみ。視覚的な安定感を与える。日本の法隆寺にもみられる。
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エンタシス
- 〘 名詞 〙 ( [ギリシア語] entasis 「張り」の意 ) 底部が頂部より太い、円柱胴部のゆるやかなふくらみ。古代ギリシアのドーリア式建築で著しい。輪郭が直線の柱は中細で不安定に見えるので、これを防ぐのが目的とされた。法隆寺金堂にも見られる。
- [初出の実例]「太い柱の真んなかのエンタシスの工合を自分の手のうちにしみじみと味ははうとした」(出典:十月(1941)〈堀辰雄〉一)
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エンタシス
えんたしす
entasis
緊張、張りなどを意味するギリシア語に由来する建築用語。ギリシア建築の柱身に付されたわずかな膨らみ、胴張り。視覚的には柱身にエンタシスを付すことによって柱の硬直さを和らげる一方、建築上部の重圧に対して緊張感を与える。ギリシア建築ではドーリス式の柱に顕著に表現され、イオニア式、コリント式の柱身にもわずかながら認められる。エンタシスはその後ローマ建築やルネサンス建築の柱にもしばしば採用されているが、わが国の建築では法隆寺南大門や唐招提寺(とうしょうだいじ)金堂などの木柱にその例がみられる。
[前田正明]
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エンタシス
建築用語。柱身の胴につけられたわずかなふくらみ。エジプトやバビロニアの柱にも見られるが,建築要素として確立したのは古代ギリシアのドリス式,イオニア式からで,後代の建築にも目だたない程度に採用されている。法隆寺にもその影響が見られシルクロード経由の文化東漸の例とされる。
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エンタシス
entasis
建築用語。円柱の柱身や塔などに付されたふくらみ。ギリシアのアルカイック期のドーリス式円柱に特に顕著で,柱身のなかほどから上部にかけてふくらみのある曲線を示す。柱が荷重を支える力を表現すると同時に,外光によって柱の中央部がくびれて見えるのを防ぐとされる。前5~4世紀になり,次第に少くなる。ゴシックの塔やロマネスクの柱身にもみられる。
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エンタシス
胴張りとも。建物の円柱にみられる曲線状のふくらみ。下から3分の1ぐらいの所を最も太く,上方・下方へいくにしたがって細くする。起源はギリシア建築にさかのぼり,日本へは中国から伝えられた。日本建築では法隆寺金堂・五重塔・中門にみられ,その後は奈良時代の建物と大仏様建築にわずかなふくらみがある。
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エンタシス
entasis
古代ギリシア建築の円柱にみられる胴がふくらんだ様式
下端から全体の高さの3分の1ほどのところが最大径をなす胴ふくらみで,そのために力量感があふれてみえる。日本では法隆寺中門・廻廊などの飛鳥建築にこの様式がみられる。
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エンタシス
entasis
円柱の線をやや曲線的にふくらませ,胴張りをする建築方法
古代ギリシアの神殿建築で,柱の中央が細く見える錯覚を矯正するために考案された。特にドーリア式に著しい。日本建築でも,法隆寺中門と金堂などに見られる。
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世界大百科事典(旧版)内のエンタシスの言及
【柱】より
… 断面の形状をみると,円柱と方柱のほか六角柱,八角柱,長方形の鏡柱や片蓋(かたぶた)柱,角に自然の丸みを残した面皮(めんかわ)柱などがある。円柱は飛鳥・奈良時代には下方が膨らんでおり,これを[エンタシス](胴張り)という。鎌倉時代に伝来した禅宗様(唐様(からよう))や大仏様(天竺様)の建築では,粽(ちまき)といって上下を急に(禅宗様)あるいは,上方を緩やかに(大仏様)細める手法が用いられた。…
※「エンタシス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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