ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「イ・サン」の意味・わかりやすい解説
イ・サン(李箱)
イ・サン
Yi Sang
[没]1937.4.17. 東京
朝鮮の詩人,小説家,画家。本名キム・ヘギョン(金海卿)。1929年京城高等工業学校建築科を卒業,朝鮮総督府の建築課技手となる。朝鮮建築会誌『朝鮮と建築』の表紙図案公募で 1位と 3位に入選。1930年,初の長編小説『十二月十二日』を『朝鮮』誌に連載,1931年には『朝鮮と建築』誌に日本語詩『異常ナ可逆反応』『三次角設計図』などを発表した。1934年,イ・テジュン(李泰俊)やパク・テウォン(朴泰遠)らでつくるモダニズム文学グループ「九人会」の同人となり,『朝鮮中央日報』に『烏瞰図(うかんず)』を連載したが,難解すぎると批判されて中断。1936年『朝光』誌に短編小説『翼』を発表し,話題となった。『童骸』(1936),『終生記』(1937),『失花』(1937)などの短編では知的な風刺と象徴的手法でインテリの自意識の世界を描いた。絵の才能も発揮し,パク・テウォンの代表作『小説家仇甫氏の一日』(1934)の挿絵などを手がけた。喫茶店も経営したが失敗し,困窮と無秩序きわまる生活のなか持病の結核に苦しんだ末,更生を期して渡日。東京では病と飢えの苦しみから徘徊しているところを警察に逮捕されたが,結核が悪化して保釈され,まもなく東京帝国大学付属病院で死亡した。1977年,イ・サンの文学的功績をたたえ,短編,中編の純文学作品を対象とするイ・サン文学賞が創設された。
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