改訂新版 世界大百科事典 「イナモリソウ」の意味・わかりやすい解説
イナモリソウ
Pseudopyxis depressa Miq.
山地の木陰に生えるアカネ科の軟らかい多年草。名前は,江戸時代に名古屋の花屋が伊勢菰野(こもの)の稲森山に多産するこの植物をとり,イナモリソウと名付けたことによるという。細い地下茎が地中をはい,地上茎は高さ1.5~10cm。葉は卵形で1~3対あり,茎の先に集まって4枚が輪生しているようにみえることもある。花は葉腋(ようえき)または茎の先につき5数性,5~6月に咲く。花冠は筒状漏斗形で長さ2~2.5cm,淡紫色で美しい。子房は下位,5室で各室に1個の胚珠が基生し立ち上がる。柱頭は5裂。関東以西,四国,九州に分布する。イナモリソウ属Pseudopyxisは日本特産で,ほかにシロバナイナモリソウP.heterophylla(Miq.)Maxim.がある。サツマイナモリOphiorrhiza japonica Blumeは薩摩産イナモリソウの意味で,見かけが似ていることによるが,類縁はなく,茎の下部は木化して残る。
執筆者:福岡 誠行
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報