改訂新版 世界大百科事典 「イネゾウムシ」の意味・わかりやすい解説
イネゾウムシ
rice plant weevil
Echinocnemus squameus
甲虫目ゾウムシ科に属し,イネの害虫として知られる。からだは黒色で,背面は灰褐色の鱗毛を密生する。胸部や上翅の中央部の鱗毛は暗色。上翅後方に1対の灰白色の小紋がある。体長5mm内外。本州以西のほか,熱帯域に広く分布し,成虫は4月ごろから出現する。水稲の苗の葉鞘(ようしよう)部に口吻(こうふん)をさしこんで食害するため,この部分から葉が折れる。また生育したイネの葉を食べて小穴をあける。成虫は6~7月ごろ,イネの水ぎわの茎に小穴をあけ1卵ずつ産みつける。孵化(ふか)した幼虫は水田の土中で根を食害する。幼虫は白色でうじむし状。胸脚を欠くが頭部は明りょう。十分に成長したものは体長9mm内外。9月ごろから蛹化(ようか)し,9~11月に新成虫となって出現し,イネの登熟後期のもみを加害し,〈かじり米〉をつくる。1年に1世代で,通常は成虫越冬であるが,成育の遅れた個体は幼虫で越冬。
執筆者:林 長閑
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報