日本大百科全書(ニッポニカ) 「イラコアナゴ」の意味・わかりやすい解説
イラコアナゴ
いらこあなご / 伊良子穴子
Kaup's arrowtooth eel
[学] Synaphobranchus kaupii
硬骨魚綱ウナギ目ホラアナゴ科に属する海水魚。北海道知床(しれとこ)以南の太平洋沿岸、西太平洋からインド洋、南アフリカ、グリーンランド、アイスランドなどの海域、大西洋に広く分布する。体は側扁(そくへん)して細長く、尾部は後方に向かってだんだんと細くなる。肛門(こうもん)は臀(しり)びれ直前に開く。前鼻管は吻(ふん)の前3分の1に位置し、後鼻孔(こうびこう)は管がなく、目のやや前方にある。目は口裂の中央近くに位置する。口は大きく、目の後縁下方を越える。上下両顎(りょうがく)歯は小さい犬歯状で、すべての歯は顎骨と緩く関節しているため、押さえると倒すことができる。前方と内側にある歯はほかより大きい。鋤骨歯(じょこつし)(頭蓋(とうがい)床の最前端の骨にある歯)は小さくて、主上顎骨歯と同大である。鰓孔(さいこう)は体軸に平行した裂孔状で、左右が接近して体の下面に開き、その後端は胸びれ基底下に達する。鱗(うろこ)は細長い棒状で、平行する2~3枚ずつが相互に直角に配列する。側線は乳頭状突起の先端に開口する。背びれの始部は臀びれの始部よりもすこし後方から始まり、尾びれとつながる。体は一様に濃褐色。全長は約1メートルになる。水深120~4800メートルにすむが、普通は水深400~2200メートルで、底引網によって漁獲される。マアナゴの代用にされ、蒲焼(かばや)きにするとおいしい。ホラアナゴに似るが、ホラアナゴは卵形の鱗をもち、目は口裂の後端近くに位置することなどで本種と区別できる。
[尼岡邦夫 2019年6月18日]