生物が外界から摂取した各種の物質を素材として,自己に必要な生体内物質を合成する活動を指す。単に同化ともいう。異化作用(catabolism,dissimilation)はその逆に生体物質を分解する活動をいう。同化作用と異化作用は新陳代謝の二大局面であり,通常,前者は吸エルゴン性でATPをエネルギー源として要求し,後者は発エルゴン性でATPの産生に役だつ。外界の素材として利用される物質は,生物の種類と栄養要求性の違いによって種々さまざまである。例えば独立栄養生物は,エネルギーを太陽から直接獲得する。また同化作用によって生体内で合成される物質も多岐にわたるが,そのおもなものは炭水化物(糖質),タンパク質,脂質の三大栄養素である。これらの物質の中には,グルコース(ブドウ糖),フルクトース(果糖),各種アミノ酸,低級(短鎖)脂肪酸や有機酸のような低分子化合物から,多糖類やタンパク質,核酸,高級(長鎖)脂肪酸などの高分子物質にいたる広い範囲の分子量分布がみられる。最もよく知られている同化作用である炭酸同化と窒素固定について以下に述べてみよう。
生物が二酸化炭素を吸収して有機物に転化する反応を指す。無機栄養生物(植物)による光合成,細菌による光合成と化学合成,無機・有機栄養生物の両方にみられる炭酸固定に大別される。光合成と細菌型光合成はどちらもそのエネルギーを光から得るが,前者はそのおりに酸素が発生する。化学合成とは,無機物の酸化によって遊離したエネルギーを利用して,炭酸固定を行う営みを指す。一方,有機栄養性の細菌や動物の組織では,二酸化炭素の付加によって,既存の有機化合物の炭素数を増加する営みがあることが知られ,炭酸暗反応と呼ばれる。無機栄養生物には,カルビン回路(還元型ペントースリン酸回路),C4-ジカルボン酸回路などが知られている。
→炭酸固定
生物が大気中の遊離窒素分子を取りこんでアンモニアに還元する営みを指す。各種の光合成細菌,アゾトバクターやクロストリディウムなどの細菌,多くのラン藻がこの活性を有する。またマメ科植物が根粒菌と,ヤマモモやハンノキなどがある種の放線菌と共生関係を保つ場合には窒素固定が行われる。窒素固定に関与する酵素は,上記の多くの生物から抽出単離されている。窒素固定反応によって窒素は還元されてアンモニアになるが,安定な反応中間体は見いだされていない。酵素としてはニトロゲナーゼが主役を演じるが,この酵素は鉄とモリブデンをそれぞれ1個と2個含むサブユニット(分子量5万と6万のサブユニット各2個からなる分子量22万の四量体タンパク質)と,分子量2.75万のサブユニット2個からなる分子量5.5万の鉄のみを含むサブユニットから成る。電子の伝達はフェレドキシンなどの関与のもとに進行するようである。このようなニトロゲナーゼ系は,分子状窒素だけでなく,酸化窒素,アジド,アセチレンなども還元しうる。
→空中窒素固定
執筆者:徳重 正信
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…このように,エネルギーの転換,獲得の効率は悪くても,これを補うための別のしくみを巧みに利用して,嫌気性生物は活発に生育増殖を行っているのである。
[代謝の種類]
エネルギー代謝と物質代謝はつねに密接に関連した形で進行するが,エネルギーの獲得につながる物質代謝を異化catabolism,またエネルギーを消費する代謝を同化anabolismと呼ぶ(図1)。異化代謝においては,食物や生体内の複雑な化合物,すなわち,核酸,タンパク質,多糖,脂質などを分解して,乳酸,酢酸,二酸化炭素,尿素,アンモニアなどの簡単な化合物に変え,それらの過程で遊離するエネルギーを,ATPなどの高エネルギーリン酸化合物の形で貯蔵したり,直接運動エネルギーとして利用したりする。…
※「同化作用」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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