改訂新版 世界大百科事典 「インゼル会社」の意味・わかりやすい解説
インゼル[会社]
Insel-Verlag
1902年ライプチヒに設立されたドイツの文芸出版社。東西分裂の時代は西ドイツのフランクフルトと東ドイツのライプチヒに分かれていたが,現本社はフランクフルト。1899年O.J.ビーアバウムらが発刊した文芸誌《ディー・インゼル》が母体となって生まれ,キッペンベルクAnton Kippenberg(1874-1950)のもとで発展。設立当初より一貫して文芸書を中心にしており,古典もの,とくにゲーテとリルケでは定評がある。外国文学関係ではプーシキン,ロルカ,マヤコーフスキーのほか,レムなどの翻訳紹介で知られる。ドイツではじめてインディアペーパーを使った《ウィルヘルム・エルンスト大公版ドイツ古典叢書》(1905-19),古今東西の名作を自由な形で集めた《インゼル・ビューヒャライ》(1912-)などシリーズものも多い。ことに後者は新書判に近い廉価さにもかかわらず,厚表紙の上に装丁が美しく,創立以来たえず装丁美を大切にするこの社の面目を示している。
執筆者:井上 修一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報