熱雲(読み)ネツウン

デジタル大辞泉 「熱雲」の意味・読み・例文・類語

ねつ‐うん【熱雲】

火砕流の一。火口から噴出した高温のガスと火山灰火山岩塊のまじったものが山腹を急速に流下する噴火現象

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精選版 日本国語大辞典 「熱雲」の意味・読み・例文・類語

ねつ‐うん【熱雲】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 高熱の雲。熱気を帯びた雲。
    1. [初出の実例]「寒氷鎔尽百谷中、熱雲蒸落九天空」(出典:文華秀麗集(818)下・和滋内史奉使遠行観野焼之作〈巨勢識人〉)
  3. 熱気をもったガス。火山から噴き出した高温のガスと火山灰などの集合したもの。

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岩石学辞典 「熱雲」の解説

熱雲

glowing avalanche, glowing cloud, glutwolke: 噴火の際に,マグマが高温度のままで火口から放出され,多量のガスと混合して非常な高速で火山体の山腹の斜面を這って走り下る厚い火山ガスおよび火山砕屑物の緻密な混合物.1902年に西インド諸島のマルティニク(Martinique)島のモン・ペレ(Mont Pelee)火山頂上に新しくできた熔岩円頂丘の中腹を破って噴出した熱雲は,噴出当初は1 100℃以上の温度で,平均秒速11~27m,最大150mで山腹を下り海岸まで達してサン・ピエール(St. Pierre)の町を全滅させた.1902年にペレ火山とスーフエリール(Soufriere)火山に発生した小型の高温火砕流にラクロアヌエ・アルダン(nuee ardente)と命名した[Lacroix : 1904, 1930].ラクロアの後に他の火砕流にも熱雲が使われ,次第に定義が混乱した.そのため様々名称が付けられており,glowing claud(Fenner), volcanic blast(Day & Allen), horizontal blast(Day & Allen), hot cloud(Allen & Zies), Glutowolde[Wolff : 1914],hot avalanche[Perret : 1924]avalanche of incandescent cloud(Fenner), absteigende Eruptionswolde(Wolff), pellesche wolke(Wolff), nuee ardente(Lacroix), nuee peleenne(Lacroix), nuee dense(Lacroix), ash flow, fire avalancheなど多数の名称がある.
nuee ardante: 火山から放出されたガス,水蒸気,火山の固体破片の白熱した塊のことである.ラクロアは熱雲を(1) ペレ型は噴火口の内火山から側方に直接爆発したもの,(2) ブルカノ型は噴火口から垂直方向に爆発したもの,(3) カトマイ型は山腹の割れ目から爆発したもの,に区別している.熱雲の下部は大部分が火山砕屑物から構成され,火山灰流のようなものである[Lacroix : 1904, 1930].フランス語のnuee ardanteは灼熱した雲の意味.1902年にペレ(Pelee)火山とスーフリール(Soufriere)火山に発生した小型の高温火砕流にラクロアが命名した[Lacroix : 1904, 1930].その後次第に定義が混乱してきた.glowing avalanche, glowing cloud, glutwolke, Glutowolde[Wolff : 1914], hot avalanche[Perret : 1924]などはすべて同じ意味で使われている.

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改訂新版 世界大百科事典 「熱雲」の意味・わかりやすい解説

熱雲 (ねつうん)
glowing cloud

火山噴出物の噴出様式の一つで小型の火砕流を指す。1902年,西インド諸島マルティニク島のプレー火山の噴火のとき発生し,2万8000人の死者を出した小型火砕流が,火砕流という現象が火山学的に広く認められるようになった最初の例である。この噴火を研究したフランスの火山学者ラクロアFrançois Antoine Alfred Lacroix(1863-1948)により,熱雲nuée ardenteという語が初めて提唱されたが(1904),その後異なったタイプの火砕流が多数発見されたため,熱雲という語はプレー型の小規模火砕流に限られるようになった。発泡度の低い緻密な本質岩塊から成るのが特徴で,噴出物量が通常0.1km3以下,流走距離は10km以下である。火口に生じた溶岩円頂丘の一部が破壊されて生じる場合が多いが(プレー型熱雲およびメラピ型熱雲),開口した火口から岩塊が四周に投げ出されて生じる場合もある(セント・ビンセント型熱雲)。小型火砕流が発泡度の大きな軽石から成る場合もあるが,その多くはプリニー式軽石噴火の一部として発生し,単独に発生することは少ない。岩質はデイサイト,安山岩質のものが多く,溶結するものはまれである。噴出量が少量のため流下速度は比較的遅く,急傾斜の山腹で30~40m/s,傾斜のゆるい裾野では10~20m/sのことが多い。熱雲発生の例としてはプレー火山(1902,1929-32),西インド諸島セント・ビンセント島のスフリエール火山(1902。死者1000人以上),浅間火山(1783。死者1200人),インドネシアバリ島アグン火山(1963。死者2000人)などが著名である。これらの例は噴出物の量が0.01~0.1km3程度の比較的大型の熱雲であり,被害も大きいが,もっと小型の熱雲は日本を含め環太平洋火山帯活火山ではかなりひんぱんに発生し,また予知は困難である。小型熱雲による災害を防ぐための努力がいっそう必要である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「熱雲」の意味・わかりやすい解説

熱雲
ねつうん

火砕流の一種で比較的規模の小さなもの。高温の溶岩ドームや溶岩流の先端が崩壊したり、火口から直接爆発がおこることによって、溶岩塊、火山灰、火山ガスが一団となって秒速10~40メートルもの超高速で山腹をなだれ下る現象である。1902年、西インド諸島のフランス領マルティニーク島プレー火山で発生した火砕流に、フランスの火山学者ラクロアF. Alfred Lacroix(1863―1948)が命名したヌエ・アルダンnuée ardenteの訳語。プレー火山の溶岩円頂丘(溶岩ドーム)が爆発し、約8キロメートル離れたサン・ピエール市を全滅させ、死者約2万8000人(20世紀世界最大の噴火災害)の被害があった。1783年(天明3)、浅間山(あさまやま)で鎌原熱雲(かんばらねつうん)が発生し、それに伴った泥流によって死者約1200人が出た。近年では、1963年のインドネシアのバリ島アグン火山の熱雲で死者約1600人を出している。

[諏訪 彰・中田節也]

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百科事典マイペディア 「熱雲」の意味・わかりやすい解説

熱雲【ねつうん】

火砕流の一種。高温のガスに火山灰や火山岩塊がまじって山腹を急速に流下するもの。粘性に富んだマグマが地表で爆発的にあわをふき出す場合に起こる。1902年西インド諸島マルティニク島のプレー火山で初めてこの型の噴火が観察された。
→関連項目シラス泥流プレー式噴火溶結凝灰岩

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「熱雲」の意味・わかりやすい解説

熱雲
ねつうん
glowing cloud

爆発的噴火によって,高温の火山物質が放出され,雲塊となって火山体の斜面を流れ下る現象。1902年西インド諸島,マルティニーク島プレー山の噴火で発生した火砕流に対して名づけられた。天明3(1783)年の浅間山の大噴火(→天明浅間山噴火)のときも熱雲が認められた。

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普及版 字通 「熱雲」の読み・字形・画数・意味

【熱雲】ねつうん

夏雲。

字通「熱」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の熱雲の言及

【火砕流】より

…構成物質の大部分が軽石の場合は軽石流,火山灰の場合は火山灰流,スコリアの場合はスコリア流と呼ばれる。小規模の火砕流は熱雲とも呼ばれる。火砕流の規模は大小広い範囲にわたるが,その規模により三つに分類する。…

※「熱雲」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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