火山噴出物の噴出様式の一つで小型の火砕流を指す。1902年,西インド諸島マルティニク島のプレー火山の噴火のとき発生し,2万8000人の死者を出した小型火砕流が,火砕流という現象が火山学的に広く認められるようになった最初の例である。この噴火を研究したフランスの火山学者ラクロアFrançois Antoine Alfred Lacroix(1863-1948)により,熱雲nuée ardenteという語が初めて提唱されたが(1904),その後異なったタイプの火砕流が多数発見されたため,熱雲という語はプレー型の小規模火砕流に限られるようになった。発泡度の低い緻密な本質岩塊から成るのが特徴で,噴出物量が通常0.1km3以下,流走距離は10km以下である。火口に生じた溶岩円頂丘の一部が破壊されて生じる場合が多いが(プレー型熱雲およびメラピ型熱雲),開口した火口から岩塊が四周に投げ出されて生じる場合もある(セント・ビンセント型熱雲)。小型火砕流が発泡度の大きな軽石から成る場合もあるが,その多くはプリニー式軽石噴火の一部として発生し,単独に発生することは少ない。岩質はデイサイト,安山岩質のものが多く,溶結するものはまれである。噴出量が少量のため流下速度は比較的遅く,急傾斜の山腹で30~40m/s,傾斜のゆるい裾野では10~20m/sのことが多い。熱雲発生の例としてはプレー火山(1902,1929-32),西インド諸島セント・ビンセント島のスフリエール火山(1902。死者1000人以上),浅間火山(1783。死者1200人),インドネシア,バリ島のアグン火山(1963。死者2000人)などが著名である。これらの例は噴出物の量が0.01~0.1km3程度の比較的大型の熱雲であり,被害も大きいが,もっと小型の熱雲は日本を含め環太平洋火山帯の活火山ではかなりひんぱんに発生し,また予知は困難である。小型熱雲による災害を防ぐための努力がいっそう必要である。
執筆者:荒牧 重雄
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火砕流の一種で比較的規模の小さなもの。高温の溶岩ドームや溶岩流の先端が崩壊したり、火口から直接爆発がおこることによって、溶岩塊、火山灰、火山ガスが一団となって秒速10~40メートルもの超高速で山腹をなだれ下る現象である。1902年、西インド諸島のフランス領マルティニーク島プレー火山で発生した火砕流に、フランスの火山学者ラクロアF. Alfred Lacroix(1863―1948)が命名したヌエ・アルダンnuée ardenteの訳語。プレー火山の溶岩円頂丘(溶岩ドーム)が爆発し、約8キロメートル離れたサン・ピエール市を全滅させ、死者約2万8000人(20世紀世界最大の噴火災害)の被害があった。1783年(天明3)、浅間山(あさまやま)で鎌原熱雲(かんばらねつうん)が発生し、それに伴った泥流によって死者約1200人が出た。近年では、1963年のインドネシアのバリ島アグン火山の熱雲で死者約1600人を出している。
[諏訪 彰・中田節也]
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…構成物質の大部分が軽石の場合は軽石流,火山灰の場合は火山灰流,スコリアの場合はスコリア流と呼ばれる。小規模の火砕流は熱雲とも呼ばれる。火砕流の規模は大小広い範囲にわたるが,その規模により三つに分類する。…
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