イーゲーファルベン会社(その他表記)I.G.Farben

改訂新版 世界大百科事典 「イーゲーファルベン会社」の意味・わかりやすい解説

イーゲー・ファルベン[会社]
I.G.Farben

正称Interessengemeinschaft Farbenindustrie Aktiengesellschaft(利益共同体染料工業株式会社)。第2次大戦前のドイツ最大の世界的化学工業トラスト。イギリスやフランスに比べ立ち遅れていたドイツの化学工業は,19世紀後半,企業集中をくり返したが,第1次大戦の敗戦で厳しい状況に立ち至った。こうしたなかで,1925年に六大化学工業会社(バーディッシュ・アニリン・ウント・ソーダ工業社(BASFバスフ)の前身),フリードリヒ・バイエル染料社(バイエル社の前身),アグファ社(アグファ・ゲバルト社の前身),ワイラー・テル・メール化学社,グリースハイム・エレクトロン化学工業,ヘキスト染料(ヘキスト社の前身))の合同により生まれたのがイーゲー・ファルベンである。ドイツの化学工業を支配していたこの六大会社は,利益共同体契約を結んで,1916年以降共同で各種製品を製造していた。IGは,カール・ボッシュの指導下に世界市場に発展を図り,第1次大戦によって失った市場をしだいに回復していった。薬品,染料,窒素肥料の分野で世界的に有名だったが,その後スタンダード・オイル社と提携し,水素添加法による人造石油のほか,チタン,合成ゴムなどの新製品を開発し,ヒトラーのナチ政府の自給政策を可能にする基盤を与えた。ナチ政府と強固に結びつき,その下で1930年代にIGは急速に発展した。第2次大戦中,毒ガスの生体実験を強制収容所の囚人に行ったことがニュルンベルク国際軍事法廷(1945-46)で暴露され,国際的非難を浴びた。戦後,東ドイツ地区の工場を失い,また西ドイツ地区では,連合国により世界平和に脅威を与えるものとして,解体を指示され,バイエル,BASF,ヘキストの三大後継会社と,カッセラCassella,ヒュルスHürlsの計5社に再編された。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のイーゲーファルベン会社の言及

【化学工業】より

…大戦後の20年代には,ヨーロッパ化学工業製品の対日輸出が再開され,ソーダ,染料,窒素という近代化学工業の三大部門のいずれもが,ヨーロッパ化学工業との競争に直面した。ドイツでは25年にBASF社等の染料企業6社が合併して巨大独占体イーゲー・ファルベン社が設立され,イギリスでは26年にブランナー・モンド社を中心に4社合同によってICI社(インペリアル・ケミカル社)が設立された。前者は染料,硫安,後者はソーダ,硫安で輸出依存度を高めながら生産を拡大し,日本はその主要輸出市場とされたのである。…

【コンツェルン】より

…戦前のカルテルに代わって,資金節約的な企業結合が図られたのが,ひとつの理由であるといわれている。代表的なものに,1925年に設立されたイーゲー・ファルベン社を中心とするイーゲー・コンツェルンがある。このグループは,戦後いったん解体されたが,その後再び復活している。…

【石油化学工業】より

…しかし,この技術は経済性に欠けていたため,戦争終了とともに生産は中止された。その後33年に,ブタジエンとスチレンを原料とする新しい合成ゴムの生産技術がイーゲー・ファルベン社によって開発され,本格的な合成ゴムの生産が開始された。また,ドイツでは石炭を原料とするガソリン生産技術の研究も1921年に始められ,やや時代は下るが34年ルールヘミーによって,石炭を原料とするガソリンの生産が始められた。…

※「イーゲーファルベン会社」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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