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人造石油 ジンゾウセキユ

百科事典マイペディアの解説

人造石油【じんぞうせきゆ】

合成石油

出典 株式会社日立ソリューションズ・クリエイト百科事典マイペディアについて 情報

大辞林 第三版の解説

じんぞうせきゆ【人造石油】

石油原油以外の原料からつくられた石油の類似物。石炭の低温乾留、石炭と水素の高温・高圧反応などの製法がある。石油資源不足の際に製造された。合成石油。

出典 三省堂大辞林 第三版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

人造石油
じんぞうせきゆ
artificial petroleum

石油以外の化石資源すなわち石炭、オイルシェール(油母頁岩(ゆぼけつがん))などを加工して得られる石油代用燃料。
 石油資源の乏しいドイツでおもに開発された技術であり、第二次世界大戦においてはドイツにおける年間総需要の30%である500万トンもの人造石油が製造された。しかし戦後、経済的に石油に競合できず中止された。日本でも当時の満州(中国東北部)、朝鮮半島、樺太(からふと)(サハリン)、北海道その他に計18か所の人造石油工場を建設し、1941~1944年(昭和16~19)の間に年産20万トン余りを生産している。しかし、完全な工業化に至る前に終戦となった。
 1970年代のオイル・ショック以後、オイルシェール、石炭からの石油製造がふたたび脚光を浴びるようになり、日本においては技術的完成をみたが、経済的、環境的問題や製品規格上の問題などの未解決部分が多く、商業規模の生産には至っていない。2000年代には中国において豊富な石炭を背景とする石油製造の機運が高まり、2009年には神華(しんか/シェンホワ)集団(中国最大の石炭企業)によって、1日の石炭処理量が6000トン規模の商業機が建設された。設備や操業の詳細は不明であるが、種々の問題を解決しつつ稼動中との報道もあり、中国は世界で唯一石炭の直接液化技術を商業化した国になった。
 おもな工業的製造法には次の三つがある。
(1)石炭の低温乾留法 石炭を500~600℃で乾留すると液体の低温タール6~12%と、固体の低温乾留コークス(半成コークスまたはチャー)および可燃性ガスが得られる。19世紀の末から石炭暖房によって深刻化したロンドンなどの都市の煤煙(ばいえん)防止の必要性から生まれた技術であり、低温乾留コークスは火付きがよく煤煙の少ない家庭用固体燃料として、おもにイギリス、フランスで生産された。第二次世界大戦においてドイツや日本では、このタール収率の比較的高い低温乾留に着目し、人造石油の製造に利用した。得られた低温タールはさらに水素添加されて水素含量を高めると同時に脱酸素されて、おもに航空ガソリンとして利用された。オイルシェールの場合も石炭と同様に低温乾留によって石油類似のシェールオイルが得られる。
 一方、1100~1200℃で乾留する高温乾留の場合には、いったん生成した低温タールが赤熱コークス層や炉頂空間部において二次分解を受け、一部が水素、メタン、一酸化炭素などとして離脱するため、最終的に生成するタールは4~5%程度となる。このコールタールは高温タールとよばれ、ナフタリンやアントラセン等の芳香族成分が豊富であるため、液体燃料としてではなく、石炭化学原料として重用される。また、高温乾留で得られるコークスの特徴は高強度・高品質であり、大型高炉用として不可欠なコークスである。
(2)石炭の直接液化法 石炭も石油も主成分は炭素と水素であるが、水素の割合が石油には13%以上含まれるのに対して石炭では5%以下にすぎない。したがって石炭に水素を添加することによって石油類似の炭化水素に転換できるはずである。この考えを基に、1913年にドイツのベルギウスは直接に石炭を石油に変えることに成功した(ベルギウス法または水素添加法)。石炭を微粉砕し、これに石炭液化の工程でできた重質油を50%以上加え、さらに鉄系の触媒を数%混ぜた石炭ペーストを、反応温度450~470℃、水素圧力300~700気圧の反応塔に送入して反応させると、石炭の大部分が人造石油に転換する。1927年に初めてドイツのロイナに年産10万トン規模の本格的な液化工場が建設され、その後第二次世界大戦中の1943年には五つの液化工場から150万トンの内燃機関用燃料が生産された。日本でも1923年(大正12)には燃料研究所(のちの通商産業省公害資源研究所、現・独立行政法人産業技術総合研究所つくばセンター)および山口県の徳山海軍燃料廠(しょう)で研究が開始され、第二次世界大戦中には満鉄撫順(ぶじゅん/フーシュン)と朝鮮人造石油阿吾地(あごち/アオチ)において、1日の石炭処理量がそれぞれ50トンと100トンの試験工場が稼動したが、大量生産には至らなかった。
 その後も石油資源が逼迫(ひっぱく)するたびに、石炭の直接液化の実用化が目ざされてきたが、中国以外では本格的な生産は行われていない。
(3)石炭の間接液化法 石炭をいったんガス化して、一酸化炭素と水素からなる混合ガスに変え、180~250℃、10~45気圧の反応条件下で鉄系などの触媒を用いて反応させると人造石油が合成される(フィッシャー‐トロプシュ法)。1923年に発明されたこの合成法は、その後改良が加えられて工業化され、第二次世界大戦末期の1944年のドイツにおける生産量は75万トンにも達していた。一方、日本でも北海道の滝川(たきかわ)や九州の大牟田(おおむた)で人造石油合成工場が稼動したが、1944年の生産量は2万トン程度にすぎなかった。
 液体燃料や化学品原料を石炭から得るための実用的な手段として、南アフリカ(1955~)や中国(2008~)などで多くの商業装置が稼動している。[上田 成・荒牧寿弘]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典内の人造石油の言及

【合成石油】より

…人造石油artificial petroleumあるいは合成原油ともいう。オイルサンドオイルシェール,石炭などを原料として生産される合成液体燃料であるが,とくに石炭の液化によるものを指すことが多い。…

※「人造石油」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社日立ソリューションズ・クリエイト世界大百科事典 第2版について | 情報

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