改訂新版 世界大百科事典 「ウイグル文献」の意味・わかりやすい解説
ウイグル文献 (ウイグルぶんけん)
中国,新疆ウイグル自治区のトゥルファン(吐魯番),ハミ(哈密),クチャ(庫車)あるいは甘粛省の敦煌などから出土したトルコ語(ウイグル語)で書かれた文献。ウイグル文書とも呼ばれる。宗教関係の内容をもつ文献が圧倒的多数を占めるが,証文や売買契約書などのいわゆる世俗文書も含まれている。宗教文献中最大量を保っているのは仏典類である。そのほとんどはトカラ語,中国語,サンスクリットあるいはソグド語からの翻訳仏典といってよい。ほかにマニ教やキリスト教の経典もある。これらウイグル文献は,ウイグル文字のほかにマニ文字,突厥(とつくつ)文字,ブラーフミー文字,チベット文字,エストランゲロ文字を用いて書き表されている。文献の大部分は紙を用いているが,木や石によるものもある。作成年代の明記されたものは少ないが,おおよそ9世紀から14世紀の間に書かれたものと推定してよい。しかし,例外的には17,18世紀の書写年代をもつ文献もある。
執筆者:庄垣内 正弘
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報