トゥルファン(読み)とぅるふぁん(英語表記)urfan

日本大百科全書(ニッポニカ) 「トゥルファン」の意味・わかりやすい解説

トゥルファン
とぅるふぁん / 吐魯番
urfan

中国、新疆(しんきょう)ウイグル自治区東部、天山(てんざん)山脈南麓にある地域、およびその中心となる地級市をさす。2017年時点でトゥルファン地級市は、1市轄区(高昌(こうしょう)区)、2県(ピチャン県、トクスン県)を管轄する。人口62万2903(2010)。

 地域名としてのトゥルファンは、東部天山のボグド連山と南のクルク・タグとの間に広がる盆地をさす。北から南に緩やかな傾斜をなし、その最低部は海面下150メートルに達する。降水量が極端に少なく、炎暑の地として名高く、豊饒(ほうじょう)ではあるが水が乏しいので、カレーズ坎児井(カンアルチン))とよばれる地下水路による灌漑(かんがい)が行われている。この地は古くから東西交渉路上の要地として、またオアシス農耕地帯と北方のステップ遊牧地帯との接点として著名であり、そのために周辺諸勢力の動向に左右された複雑な歴史をもっている。すでに紀元前2世紀の中国の記録『史記』には、この地に車師(しゃし)王国の存在を伝え、以降、遊牧勢力や中国の諸王朝の支配を受けたが、ときには高昌国などの土着的王朝も成立している。9世紀には新たにトルコ系ウイグルが移入して、地域住民はトルコ語を用いるようになり、彼らは西ウイグル王国を建てた。18世紀に清(しん)に征服され現在に至っている。

 都市名としてのトゥルファンは、10世紀にすでに盆地内の新しい町として存在したが、その地方の代表的都市になるのは15世紀のことである。とくに清朝の治下で、新疆北部および南部と、中国内地とを結ぶ拠点都市として重要視され、発展した。南疆線(トゥルファン―カシュガル)もトゥルファンを起点としているほか、蘭新(らんしん)線が通る。トゥルファン空港からは国内各都市への航空路線が開設されている。高昌区にはアスターナ古墳群をはじめとする貴重な遺跡が点在する。

[堀 直・編集部 2018年1月19日]

世界遺産の登録

2014年、ユネスコ(国連教育科学文化機関)により「シルク・ロード:長安‐天山回廊の交易路網」の構成資産として、高昌故城(カラ・ホージョ)と交河故城ヤール・ホト)が世界遺産の文化遺産に登録された(世界文化遺産)。

[編集部 2018年1月19日]


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