改訂新版 世界大百科事典 「ウキゴケ」の意味・わかりやすい解説
ウキゴケ (浮苔)
Riccia fluitans L.
ウキゴケ科に属する水生の苔類。全世界に広く分布し,日本でも全国の池や水田に生じるが,農薬の影響のためか,近年は各地でかなりまれになった。植物体は葉状で長さ1~3cm。二叉(にさ)分枝を繰り返しながら生長するが,後方からしだいに腐って枝が分離して個体数をふやす。ウキゴケ属Ricciaは日本に7種あるが,ウキゴケ以外は,主として秋から冬にかけて畑や水田の土上に出現する。この属の胞子体はコケ植物の中で最も単純な構造をもち,蒴柄(さくへい)も足もなく,蒴は葉状体の中に埋もれている。また,一般の苔類と異なり,弾糸を欠く。ウキゴケ科の別属のイチョウウキゴケRicciocarpus natans(L.)Cordaはウキゴケと同様に世界中に広く分布し,水面に浮かぶ。植物体はイチョウの葉の形で長さ1~1.5cm,腹面に紫色でリボン状の鱗片を備える。
執筆者:北川 尚史
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報