改訂新版 世界大百科事典 「ウシャブティ」の意味・わかりやすい解説
ウシャブティ
ushabti
エジプト古王国後期以降の墳墓より出土する副葬用ミイラ形小像。古くはシャワブティshawabtiと呼ばれた。冥界において人に課せられる農耕作業,灌漑水路の整備,東より西への砂石運搬等の強制労働の代理人として働かせることが目的であった。初期のものには手もなく文字も刻まれていなかったが,第12王朝になってから死者の名前,称号が刻まれるようになった。さらに第18王朝以降のものには手がつけられ,鍬,農業用バスケット,生命の象徴アンクなどを持ち,〈死者の書〉第6章(冥界における故人の身代りについての章)が彫り込まれるようになった。第19王朝に入ってから大量に出土するケースが多くなり,セティ1世の墳墓からは700個ものウシャブティが出土している。ウシャブティには黒っぽい硬石でできたもの(中王朝期ないしは第25・26王朝),鍬またはアンクを持ったもの(第18王朝中期またはそれ以降),何も持たないもの,バスケットを胸に持つもの(第18王朝),バスケットを背にしたもの(第19王朝またはそれ以降),白地に赤,青,緑,黄,黒等で装飾を施したもの(第18王朝末から第20王朝),頭部に細い線の入ったもの(第19王朝後期)などに分類できる。
執筆者:中山 伸一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報