翻訳|hyperemia
動脈血が局所に異常に増加した状態で,動脈とくに細小動脈が拡張し,大量の動脈血が流入しておこる。似たようなものに鬱血(うつけつ)があるが,これは静脈血が異常に増加した状態をいい,充血とは異なる。動脈は血管運動神経の作用により拡張・収縮する。そこで血管拡張神経が緊張したり,血管収縮神経の麻痺などによって充血がおこる。また,炎症による炎症性充血,機能亢進による機能性充血,対をなしている臓器の一側で血液の灌流が停止するか減少した場合に他側におこる代償性充血,ある局所で血行の停止または虚血がおこるとその付近の組織におこる傍側性充血(側副性充血ともいう)などがある。組織は鮮紅色を呈し,温度は高くなり,拍動を自覚的にも他覚的にも感ずるようになる。また,血液の量が増加するとともに,血液の液体成分が組織内に漏出するため軽くはれる。充血による組織の障害は,虚血に比して軽く,一般に機能亢進がみられる。たとえば,充血による顔面の発汗や唾液の分泌亢進などがその例である。しかし脳では充血により頭痛などの機能障害がおこる。充血は一過性のことが多く,原因がなくなれば消失する。しかし長く続くと,組織や臓器に過栄養による肥大や過形成がみられることもある。
執筆者:毛利 昇
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
局所におこる血液の循環障害の一つ。血液、リンパ液、および組織液の総称である体液の循環に障害がおこった場合、一般に循環障害とよぶが、血液の循環障害がもっとも重要である。血液循環障害には、大循環、小循環、門脈などにおこる比較的全身性の場合と、局所におこる血液の循環障害とがあり、後者は病理学的に貧血、充血、うっ血、出血、血栓症、塞栓(そくせん)症、梗塞(こうそく)に分類されている。充血とは、臓器・組織中に流入する血液の量が増加している状態をいう。生理的な状態でも、消化時に腸粘膜が充血することはしばしば認められるが、これは一般に機能亢進(こうしん)のために生ずるものである。一方、局所に流入する血液を入れる血管が太くなる場合には、当然、その局所の血液の量は増加し、充血をおこすことになるが、これは、その血管を支配している神経の障害、すなわち血管収縮神経の麻痺(まひ)、あるいは血管拡張神経の緊張、血管壁自体に存する筋肉の麻痺などによるものである。また、臓器・組織の一部に貧血がおこると、その付近または他の場所に充血がみられることがあり、これは代償性充血とよばれる。
[渡辺 裕]
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