エウリュディケ(英語表記)Eurydikē

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「エウリュディケ」の意味・わかりやすい解説

エウリュディケ
Eurydikē

ギリシア神話の英雄オルフェウスの妻。美貌ニンフだったエウリュディケは天才的楽人として名高いオルフェウスと結婚してまもなく,アリスタイオス凌辱を加えられそうになり,逃げる間に毒ヘビにかまれ頓死した。オルフェウスはエウリュディケを生き返らせようとして,竪琴を持って冥府に下り,音楽の力で死者の国を支配する非情な神々の心を動かし,いったんは地上に連れ帰る許可を与えられた。しかし,途中で後ろを振り返ってエウリュディケの姿を見てはならないという禁止に違反したために,地上に着く直前にエウリュディケは冥府に連れ戻されてしまったという。

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百科事典マイペディア 「エウリュディケ」の意味・わかりやすい解説

エウリュディケ

ギリシア伝説のオルフェウスの妻。蛇にかまれて死んだが,オルフェウスは冥界にくだって音楽で冥府の神々の心を動かし,彼女を従えて地上に帰ろうとするが,約束を破って後ろを振り返ったため,再び彼女は冥界に引き戻された。
→関連項目ニンフ

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世界大百科事典(旧版)内のエウリュディケの言及

【オルフェウス】より

…このため,アルゴナウタイの遠征(アルゴナウタイ伝説)に参加したときも,琴を弾じて浪風をしずめ,セイレンたちの待ちかまえる海の難所では,みずからの歌で彼女たちの魔法の歌を負かして船の安全を保った。遠征から帰ると,ニンフのエウリュディケEurydikēを妻としたが,彼女がじきに毒蛇にかまれて死んだため,彼は最愛の妻を取り戻すべく,地下界に下って音楽で冥府の王ハデスの心を動かし,地上に出るまでは決して後ろをふりむかないという約束で妻を連れ帰る許しを得た。しかし地上にあと一歩というところで後ろの妻をふり返ったため,永久に彼女を失った。…

【神話】より


[日本神話とギリシア神話]
 日本神話はまた,これも日本から遠く隔たった地域であるギリシアの神話とも,いろいろな点で,偶然の所為とは思えぬほどよく似ている。イザナキの〈黄泉国(よみのくに)訪問〉の話は,死んだ妻を地上に連れ戻そうとして,地下の死者の国まではるばる旅をして行った夫が,冥府で課された妻を見てはならぬという禁止に背いたために失敗し,一人で地上に帰らねばならなかったという筋が,ギリシア神話のオルフェウスとエウリュディケの話にまったく一致している。そのうえ日本神話では,イザナキが冥府に着いたとき,イザナミは,自分がすでに黄泉の国の食物を食べてしまったために,せっかく迎えに来てくれても,すぐには夫といっしょに地上に戻ることができないと言って嘆いたと言われている。…

【ニンフ】より

…樹木drys(カシの木)とともに生hamaを終えると信じられたところから,ハマドリュアデスHamadryadesとも呼ばれる。オルフェウスの妻となったエウリュディケEurydikē,アポロンの求愛を逃れるべく月桂樹に変身したダフネなど。(3)アルセイデスAlseides 森のニンフ。…

【マケドニア】より

…しかしその会議で,大王の異母兄弟フィリッポス3世,大王の遺子アレクサンドロス4世の事実上の摂政となった帝国宰相ペルディッカスの横死後,アンティパトロスが摂政役に就き,二人の王とともにマケドニアに戻った(前321)。彼の死後フィリッポス3世の妻エウリュディケEurydikēと幼いアレクサンドロス4世の祖母(すなわち大王の母)オリュンピアスが軍を率いて戦い,オリュンピアスはフィリッポス3世夫妻を殺害する(前316)。しかし彼女はアンティパトロスの子でマケドニア支配を狙うカッサンドロスKassandrosに殺され,カッサンドロスはさらにアレクサンドロス4世とその母をも殺し,アルゲアダイの男系は絶えた。…

※「エウリュディケ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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