エレホン(その他表記)Erewhon

デジタル大辞泉 「エレホン」の意味・読み・例文・類語

エレホン(Erewhon)

バトラー小説。1872年刊。架空の国エレホンにかこつけ、当時の英国社会を風刺したユートピア小説。題名は「nowhere(どこにもない場所)」を逆さに綴った造語

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「エレホン」の意味・わかりやすい解説

エレホン
Erewhon

イギリスの作家 S.バトラーの小説。 1872年刊。ユートピアの記述を通して 19世紀イギリスの社会制度を風刺したもの。植民地の羊飼いである主人公は,高くそびえる山脈を越えて,そのかなたにある未知の国エレホン (nowhere〈どこにもない〉の逆綴り) にたどり着く。そこでは一切がイギリスと逆である。病気は罪悪として罰せられるが,罪人は病人として手厚い治療を受ける。何百年か前に機械派と反機械派の内乱があり,結局後者が勝ったため,機械は最も忌わしいものとして嫌われている。教会は世間に通用しない金を発行する音楽銀行,大学は不合理学院 College of Unreasonと呼ばれている。最後に主人公はこの国の女性に恋し,ともに気球に乗って脱出する。続編として『エレホン再訪』 Erewhon Revisited (1901) がある。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のエレホンの言及

【バトラー】より

…またホメロス作として現在知られている《オデュッセイア》の作者は女性であったという説を発表(1897)して,世間を驚かせた。しかし,彼の本領は文学,とくに小説の創作であって,72年に《エレホンErewhon》を発表した。表題はnowhere(どこにもない)のつづりをほぼ逆にしたもので,ユートピア(ギリシア語に由来する語〈どこにもない場所〉の意)を舞台にした風刺小説である。…

【ユートピア】より

…すでに18世紀にJ.スウィフトが《ガリバー旅行記》(1726)において,極大と極小の架空社会を描いたときに,理想国家の冷厳な現実が間接的にとりあげられていた。S.バトラー《エレホン》(1872)もまた,一見理想的にみえる社会のうちに逆説的な暗黒面を見いだし,結果として未来の予測可能性を疑わしめることになった。 19世紀から20世紀にかけて,新たな都市計画運動が起こり,ユートピアの理想が社会計画のうちに投影されるようになった。…

※「エレホン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、和歌山県串本町の民間発射場「スペースポート紀伊」から打ち上げる。同社は契約から打ち上げまでの期間で世界最短を目指すとし、将来的には...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android