オキナエビス(その他表記)Pleurotomaria beyrichi; Beyrich's slit shell

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「オキナエビス」の意味・わかりやすい解説

オキナエビス
Pleurotomaria beyrichi; Beyrich's slit shell

軟体動物門腹足綱オキナエビス科。チョウジャガイ (長者貝) ともいう。殻高,殻径とも 10cmに達する。殻は円錐形で,やや大きく,螺塔は 11階。殻表は鮮かな赤橙色の火炎状模様が成長脈に沿ってあり,またやや太い顆粒状の螺肋がある。殻口の外唇には細長い切れ込みがあり,軸唇は厚くて強くねじれる。臍孔はない。殻口内は強い真珠光沢がある。ふたは革質で円形。軟体にはアワビ類などと同様に鰓,腎臓,心臓の心耳など多くの器官が1対ずつあるが,他のほとんどの腹足類では,これらの器官は片方が退化して左右不対称になっている。殻口の切れ込みもアワビの穴列に相同なもので,この端に肛門が,その両側に鰓が位置する。相模湾から銚子沖,小笠原諸島,志摩半島沖に分布し,水深 50~200mの岩礫底にすむ。なお,オキナエビス科 Pleurotomariidaeは,古生代中生代に栄えた貝類で,その後衰えて絶滅したと思われていたが,1855年に西インド諸島でヒメオキナエビスが現生していることがわかり,「生きている化石」として注目された。しかし,日本ではさらに古く安永4 (1775) 年にベニオキナエビスの図が木村蒹葭堂の『奇貝図譜』に載せられている。バハマ諸島からブラジル,日本からインドネシア南アフリカなどで 20種ほどが報告されており,そのうち日本産はオキナエビス,ベニオキナエビス,コシタカオキナエビス P.salmiana,テラマチオキナエビス P.teramachii,アケボノオキナエビス P.diluculumリュウグウオキナエビスの6種である。

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