日本大百科全書(ニッポニカ) 「おじ方居住婚」の意味・わかりやすい解説
おじ方居住婚
おじかたきょじゅうこん
新婚の夫婦がどこに居所を定めるかという居住規制rules of residenceに関してアメリカの人類学者マードックが行った分類の一つ。アバンキャローカルavunculocalという。結婚した夫婦が夫の母方のおじの家またはその近所に世帯を構える制度をさしている。カナダのブリティッシュ・コロンビア州の先住民ハイダの社会では、少年は10歳くらいになると両親の家を出て、別の村の母方のおじのもとで暮らし始め、のちにその村で嫁を迎える。おじ方居住婚はこのような慣行に基づいている。この制度のもとでは母系的に結ばれた男性たちが地域的に集結することになることから、母系出自との結び付きが示唆される。もっともハイダの人々の間でみられるように、母方のおじの村に移り住んだ若者がおじの娘と結婚し母方交差いとこ婚を行う場合、居住形態はマードックのあげるもう一つの型、母方居住婚matrilocalとは区別できないものとなる。
[濱本 満]
『G・P・マードック著、内藤莞爾訳『社会構造』(1978・新泉社)』