父系制(読み)ふけいせい(英語表記)patriliny

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

父系制
ふけいせい
patriliny

出自が父子関係を通じてのみたどられていること,および財産地位称号などの相続継承が父子関係を通じてのみ行われることをいう。通常は父系出自集団の存在と関連し,狭義には父系出自集団の存在とそれへの帰属をいう。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典 第2版の解説

ふけいせい【父系制 patriliny】

狭義には父系出自のもつ規制,すなわち集団の成員権が父親を通じて,代々子供に伝えられていく出自の規制を意味しており,このような規制にもとづく集団を〈父系出自集団patrilineal descent group〉と称している。図のように自分(EGO)が所属するところの父系出自集団の成員を示せば,つぎのようになる。自分(EGO)とおなじ父系出自集団の成員は,図の中では▲●で示された者たちであり,上位世代の男性(▲)を通じて関係づけられるあらゆる兄弟姉妹は自分(EGO)とおなじ出自集団の成員であるが,親子関係でみると,自分(EGO)とおなじ出自集団の成員は男性(▲印)を通じてたどられる成員だけであり,成員は同様の原則にもとづいて,図中矢印の方向へと拡大しうる。

出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

父系制
ふけいせい
patrilineality
patrilineal system

財産や地位、諸権利が父から子供へと継承される形式を父系とよぶが、とくに親族集団への帰属権が父を通して継承され、このような父系出自集団が社会的・政治的に重要な機能をもっているような社会を父系制社会とよぶ。もっともこの用語は、元来かなり漠然と用いられる傾向にあり、同じ父系制とよばれる社会のなかにも、父系出自集団が単に婚姻規制のみにかかわっているだけのものから、共有財産をもち、よく組織され、政治的、経済的にきわめて重要な集団として機能している中国の宗族(そうぞく)のようなものに至るまで、さまざまである。また日本は、親族のカテゴリー認知においてはむしろ双系的であるにもかかわらず、相続の様式と家父長制の事実によって、父系制社会のなかに数えられたりすることもあり、混乱のもとになっている。

 出自集団の存在という意味での父系制は、父権制や父方居住といったものとは区別して考える必要があるが、同じ単系出自をとる母系制の場合と比べると、父系制、父権制、父方居住がかなりの程度重なり合って現れることは事実である。つまり父系制は、同じ出自をもつ男性成員を居住単位としてもひとまとめにしておくことが、母系制の場合に比べて容易であるとはいえる。このことが、単系出自をとる社会のなかで父系制のほうが圧倒的に数多くみいだされることの一つの理由かも知れない。

 父系出自集団は、そのあり方によって、リネージ、氏族、胞族などのさまざまな形をとる。かって「未開」とよばれた諸社会では、これらが政治の唯一の枠組みとなっていることも多い。南スーダンのヌエルの人々の分節リネージ体系などが例として有名である。もちろん中国の宗族のように、中央集権的な体制のもとでも機能をもち続けている場合もある。

[濱本 満]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典の解説

ふけい‐せい【父系制】

〘名〙 家系が父方の系統で相続される制度や慣習。父系制度。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

世界大百科事典内の父系制の言及

【家父長制】より

…家族内のいっさいの権威は家父長にのみ帰属する(父権制)。家族の財産(土地と動産)はすべて家父長によって専有され,父から息子へと相続される(父系制)。このような家族類型は,とくに遊牧民族,とくに古代においてしばしば見られるが,しかしその典型は,法的透徹性ゆえに古代ローマに求められるのが通例であろう。…

※「父系制」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報