おまらす(読み)オマラス

デジタル大辞泉 「おまらす」の意味・読み・例文・類語

お‐まら・す

[動サ下二]《「おまいらす」の音変化》
与える、の意の謙譲語。差し上げる。
「布施半分もそなたへ―・せうぞ」〈虎清狂・泣尼
補助動詞)…してあげる、の意の謙譲語。
「なるならばかなへて―・せう」〈虎明狂・枕物狂

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「おまらす」の意味・読み・例文・類語

お‐まら・す

  1. 〘 他動詞 サ行下二段活用 〙 ( 「御参らす」の変化した語 ) さしあげる、あげるの意の謙譲語。
  2. [ 一 ] 人に物を与える意の謙譲語。与える先方を敬っていう。さしあげる。あげる。
    1. [初出の実例]「茶の銭もさしおかふず、舟ちんもおまらせう」(出典:虎明本狂言・薩摩守(室町末‐近世初))
  3. [ 二 ] ( 動詞の連用形に助詞「て(で)」の付いた形に付いて ) 補助動詞として用いる。人のために「してあげる」意の好意を示す謙譲語。(て)さしあげる。
    1. [初出の実例]「ただ此一句をかいてをまらすると云たぞ」(出典:玉塵抄(1563)三四)

おまらすの語誌

( 1 )室町中期に謙譲語「参らす(る)」が使われたが、口語としてはその省略形で、やや敬意の劣る「まらする」が通行した〔ロドリゲス日本大文典〕。これはのち、謙譲の意を失い、丁寧の補助動詞として用いられるようになった。
( 2 )謙譲の語法は室町末期になって「お」を冠した本項が現われたが、同義語の「進ずる」よりも俗語的であった。
( 3 )江戸時代の初期には「おます」の形も現われたが中期以降はあまり用いられなくなった。→まらする
( 4 )「おまらせう」は「おまっせう」と促音化することがある。

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