泣尼(読み)ナキアマ

デジタル大辞泉 「泣尼」の意味・読み・例文・類語

なきあま【泣尼】

狂言説法を頼まれた僧が、泣尼と異名をとる老尼法事に雇い泣かせようとするが、法談最中に居眠りをしてしまい、あげくに布施の取り分で僧と争う。

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精選版 日本国語大辞典 「泣尼」の意味・読み・例文・類語

なきあま【泣尼】

  1. [ 1 ] 法談の場で泣く役を演ずる尼。
    1. [初出の実例]「ここらになきあまへをい比丘尼と云やうなことぞ」(出典:玉塵抄(1563)一五)
  2. [ 2 ] 狂言。各流。法談を頼まれた僧は、いつも談義をありがたがって聞く老尼を伴い、施主の所に行く。僧が談義をすると尼は眠ってしまい、談義が終わってから急に泣き出す。僧は怒るが、尼は約束の布施を催促し、僧を追いかける。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「泣尼」の意味・わかりやすい解説

泣尼
なきあま

狂言の曲名出家狂言。在所に住む男が、ある寺に故人追善のための説法を頼みにやってくる。ところが、この寺の住持シテ)は説法がからっきしだめ。そこで一計を案じ、何にでもありがたがってすぐ泣く、泣尼と異名をとる老尼(尼の面を使用)を連れていき、説法の場を大いに盛り上げることにした。いざ説法を始めると、肝心の尼は居眠り、ついには横になって寝込んでしまう。ようよう説法を終えての帰り道、住持を待ち構えていた尼が、約束のお布施をくれとせがむが、住持は泣くべきときに泣かないで寝にきただけの者に分け前をやれるかと、突き倒して逃げていってしまう。空疎な説法、金銭への執着――宗教者を痛烈に風刺した一曲。

[油谷光雄]

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