改訂新版 世界大百科事典 「かっぺた織」の意味・わかりやすい解説
かっぺた織 (かっぺたおり)
伊豆諸島の八丈島に伝わる織技で,経糸(たていと)によって文様が織りだされる二重組織の紋織物。機(はた)は機台のない素朴な〈いざり機〉が用いられる。機の機構は,まず2色交互に整経された経糸の束の一端を柱などに縛って固定し,次にこの糸を綾をとって上下に二分する。そしてさらに中筒によって上糸1,中糸2,下糸1の割合で上中下の三つに分ける。色も上糸,下糸が1色で,中糸が2色。上中下に分けられた経糸の上側と下側に最も多い場合で五つずつ合計10個の綜絖(そうこう)がつく。これによって二重の組織がつくられ,表裏色の異なる文様が織りだされていく。織幅は3~15cmくらいの細幅で,文様はいずれも直線で構成される幾何学文様で,それぞれ〈つながり〉〈そろばん〉〈十の字〉〈山道〉〈鱗〉〈市松〉〈井桁〉〈まるまなこ〉などの名称がある。1960年無形文化財に指定された。当時の唯一の技術保持者玉置びんは80年に83歳で没し,現在この技術の継承者はいない。
執筆者:小笠原 小枝
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報