市松(読み)いちまつ

精選版 日本国語大辞典 「市松」の意味・読み・例文・類語

いち‐まつ【市松】

〘名〙
※評判記・千石篩(1754)中「市松の半てんに、同じ様な股引とは」
※思出の記(1900‐01)〈徳富蘆花〉五「窓の何箇(いくつ)も明いた建物がいちまつに並むで居る」
③ (童名に多いところから) 男の子通称
※茶屋諸分調方記(1693)一八「市松がわるさゆふをたのしみ」
④ 男陰をいう隠語
浮世草子・新色五巻書(1698)四・一「性気いよいよ盛んに市松がいかり首をもたげ」

いち‐ま【市松】

〘名〙 (「いちまつ」の変化した語)
雑俳・新とくさ後編(1800)「マアべかこ・遣(や)る気で持ッて来た市松(イチマ)
※雑俳・五色墨(1809)「なぐさみて・市松(イチマ)の麁物(そふつ)縫ふ妾(てかけ)

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デジタル大辞泉 「市松」の意味・読み・例文・類語

いちまつ【市松】

市松模様」の略。
市松人形」の略。

いち‐ま【市松】

《「いちまつ」の音変化》「市松いちまつ人形」の略。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「市松」の意味・わかりやすい解説

市松
いちまつ

正方形の連続模様。霰(あられ)、石畳ともいう。ことに藍(あい)と白というふうに濃淡対比が明確な色彩の正方形を一つ置きに配したものであることが多い。元来、織物で経緯(たてよこ)の糸を直交するとき自然に生じる形象である。そのため、この模様は染織ともっとも密接な関係をもって発展してきた。1741年(寛保1)歌舞伎(かぶき)役者の佐野川市松が江戸の中村座で『心中万年草』の小姓粂之助(くめのすけ)を演じ、その際、袴(はかま)にこの模様を使ったのが江戸市民に受け、市松の人気とともに流行した。以来この模様を市松という。江戸時代の市松模様は、織物や染物にとどまることなく、陶器、漆器といった広い工芸分野の装飾にも用いられた。

村元雄]

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