カピタティオ(その他表記)capitatio

改訂新版 世界大百科事典 「カピタティオ」の意味・わかりやすい解説

カピタティオ
capitatio

古代ローマの人頭税。共和政時代には,アフリカなど一部の属州でのみ人頭税の存在が知られるが,帝政期に入ると,おそらくは大半の属州で徴収されるようになった。しかし帝政前半期については,課税対象となる住民の範囲,課税額などは,一部の属州を除いて明らかではなく,地域によってかなりの差があったものと思われる。300年ごろディオクレティアヌスが再編した課税制度カピタティオ・ユガティオ制)のもとでのカピタティオの内容は,比較的明確に知られている。それによると,課税の単位であるカピタcapitaは,自由人,コロヌス,奴隷,さらには家畜をも含んだ。原則として男1人が1カプトcaput(カピタの単数形)と計算されたが,女やその他の課税対象をどのように換算するかは,地方によって差異があった。また,特権階級は課税対象から外されていた。東方の多くの地域(小アジア,バルカン半島)と西方の一部では,カピタは地租の単位であるユガjugaと結びつけられ,同価値として計算された。このように課税単位が整理されたことによって,課税額の計算は非常に容易になり,後期ローマ帝国の巨大な国家機構を支える財政的基盤が確立された。同時に,この制度のもとでは労働者土地に縛りつけておくことが必要となり,コロナート制の法制化がおこなわれた。なお,ローマ時代の用語法では,カピタティオという言葉はカピタティオ・ユガティオ制全体をさすこともあり,また漠然と税負担をあらわすのにも用いられた。
ユガティオ
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のカピタティオの言及

【ディオクレティアヌス】より

…かつては軍事職であった近衛軍総督という役を財務長官とし,全帝国に厳格な土地測量と人頭の申告を行わせ,土地にユガ,人頭にカピタという抽象単位を当てて課税した。これをカピタティオユガティオといい,他の産物も同じ価値基準で課税されることになり,地方により旧来の税制を残したり,二つの税体系が統合された所もあったが,収税体制はきわめて能率化した。しかしそれだけでは巨額の軍事防衛費はまかなえず,皇帝領の管理強化,さまざまな物資の取引の国家独占,国営仕事場の設置,手工業者を強制的に組合に入れて統制下に置くなどの経済統制策を進めた。…

【ユガティオ】より

…ユガは,生産力に応じて定められた地積で,その広さは,作物や地域によって異なった。ユガティオと人頭税であるカピタティオは,ローマ帝国内のいくつかの地方では結合されて,統一的な租税体系を形成した。【坂口 明】。…

【ローマ】より

…コンスタンティヌス1世はソリドゥス金貨の鋳造開始など部分的に貨幣を改良し,ソリドゥスそのものは国際信用を回復することができたが,国内取引とくに税としては現物を課することが原則となった。ディオクレティアヌスが始めた新税制(カピタティオ・ユガティオ制)は全帝国の農地と農民に対してさまざまな現物課税を行った。この税収を確保するために農民や小作人(コロヌス)は農地からの移動を禁じられ,徴税責任者とされた都市参事会員も世襲身分(クリアレスと呼ばれた)とされた。…

※「カピタティオ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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