改訂新版 世界大百科事典 「キイロダカラガイ」の意味・わかりやすい解説
キイロダカラガイ
Monetaria moneta
タカラガイ科の巻貝。成貝の殻は黄色であるが,十分成育していない個体の背面は白色で青黒色の横縞の斑があり,剣道の面のように見えるのでメンガタダカラガイの別名がある。この模様はまた宝(たから)の字の象形文字となった。殻の高さ3cm,左右の幅2.2cm,背腹の幅1.5cmくらいになる。殻は幼貝では薄くふつうの巻貝のように小さいが巻いた層がある。成育すると広い殻口の外側の縁が厚くなって内方へ曲がり,殻口は狭く細長くなり,内外の縁に多くの歯ができる。英名でmoney cowryといわれるように,中国,インド,アフリカ,ニューギニアなど広い地域で貨幣として使われた。中国では殷墟(いんきよ)に出土するが秦になって廃止された。しかし,ニューギニアの山地族の間では最近まで用いられていた。インド洋,中・西太平洋の熱帯・温帯海域に広く分布し,潮間帯から浅海の岩れき地にすむが,とくにサンゴ礁に多い。ハナビラダカラガイM.annulusは殻の背面に黄橙色の輪があり,同じ地域に分布する。
執筆者:波部 忠重
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報