日本大百科全書(ニッポニカ) 「キツネアマダイ」の意味・わかりやすい解説
キツネアマダイ
きつねあまだい / 狐甘鯛
blue tilefish
[学] Malacanthus latovittatus
硬骨魚綱スズキ目キツネアマダイ科に属する海水魚。アマダイ科の亜科にする研究者もいる。日本からは相模湾(さがみわん)、和歌山県白浜町と串本(くしもと)町付近、高知県柏島(かしわじま)、屋久島(やくしま)、南西諸島などの海域から知られているが、太平洋とインド洋に広く分布する。体は細長くて、体高は体長の15~20%。頭部の外郭はきわめてなだらかに吻端(ふんたん)まで傾斜する。吻は長くて、とがる。吻長は頭長の37~47%。目は小さく、頭のおよそ中間に位置する。上下両顎(りょうがく)はほとんど水平で、上顎の後端は目の前方の前鼻孔の下に達する。前鰓蓋骨(ぜんさいがいこつ)の縁辺は円滑、主鰓蓋骨におよそ瞳孔(どうこう)大の1本の鋭い棘(きょく)をもつ。鰓耙(さいは)は退化的で、総鰓耙数は6~10本。鱗(うろこ)は小さくて、側線鱗(りん)数は116~132枚。背びれと臀(しり)びれは基底が長く、棘部と軟条部の間に欠刻(切れ込み)がない。背びれは4棘43~47軟条、臀びれは1棘37~40軟条。尾びれの後縁は截形(せっけい)(後縁が上下に直線状)。体は背側面では緑灰色から紫青色で、腹側面では青白色。側面中央に1本の幅の広い黒色縦帯が鰓孔から尾びれの後端まで走る。黒色部は尾びれの上で下葉部へ拡張する。下葉に長方形の白色斑(はん)がある。背びれの基底部は灰褐色で、上縁は淡色。水深6~10メートルのサンゴ礁の縁近くの砂礫(されき)底に穴を掘ってすんでいる。最大体長は38センチメートル。外国では釣り、突き、籠(かご)などで漁獲されるが、日本では稀種(きしゅ)で、水族館で展示される。幼魚は成魚とまったく異なる色彩をして、ベラ科のホンソメワケベラLabroides dimidiatusによく似ているので、擬態が示唆されている。
本種はキツネアマダイ科に属する。アマダイ科のキツネアマダイ亜科とする研究者もいるが、キツネアマダイ科は体高が低いこと、背びれの前方に隆起線がないことなどでアマダイ科と区別できる。また本種は同科のキツネアマダイ属に属するが、同属のヤセアマダイとは上顎の後端が目に達しないこと、体側に黒帯がないことなどで区別できる。
[尼岡邦夫 2022年2月18日]