日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヤセアマダイ」の意味・わかりやすい解説
ヤセアマダイ
やせあまだい / 痩甘鯛
quakerfish
[学] Malacanthus brevirostris
硬骨魚綱スズキ目キツネアマダイ科に属する海水魚。アマダイ科の亜科にする研究者もいる。伊豆半島東岸から高知県、屋久島(やくしま)、南西諸島、小笠原(おがさわら)諸島などの太平洋沿岸のほか、東西太平洋やインド洋に広く分布する。本州や四国での捕獲記録は幼魚のことが多い。体はきわめて細長くて、体高は体長の12~16%。頭部の外郭は緩くなだらかに吻端(ふんたん)まで傾斜する。吻は短くて、吻長は頭長の29~37%。目は吻長の2分の1以上あるが小さく、頭部の中間よりも吻端に近い位置にある。上下両顎(りょうがく)はほとんど水平で、上顎の後端は瞳孔(どうこう)の前縁下に達する。前鰓蓋骨(ぜんさいがいこつ)の縁辺は円滑。主鰓蓋骨におよそ瞳孔大の1本の鋭い棘(きょく)をもつ。鰓耙(さいは)は退化的で、総鰓耙数は9~20本。鱗(うろこ)は小さくて、側線鱗(りん)数は146~181枚。背びれと臀(しり)びれは基底が長く、棘部と軟条部の間には欠刻(切れ込み)がない。背びれは1~4棘50~60軟条、臀びれは1棘46~55軟条。尾びれの後縁は截形(せっけい)(後縁が上下に直線状)~弱い円形。体は背側面では淡緑色で、腹側面では銀白色。背びれは淡桃色で、上縁は黄色。尾びれの中央部に2本の特徴的な暗色帯があり、それらの内側は白く、外側は黄色。水深約5~35メートルのサンゴ礫(れき)や砂底に生息する。驚いたときには頭から穴に潜る。最大体長は39センチメートル。外国では釣り、突き、籠(かご)などで漁獲され、鮮魚や塩蔵魚で売られるが、日本では食用として利用するほどとれない。
本種はキツネアマダイ科に属する。アマダイ科のキツネアマダイ亜科とする研究者もいるが、キツネアマダイ科は体高が低いこと、背びれの前方に隆起線がないことなどでアマダイ科と区別できる。また本種はキツネアマダイ属に属するが、同属のキツネアマダイとは体側に黒帯がないこと、上顎の後端が目の前縁を越えること、臀びれ軟条数が多いことなどで容易に区別できる。
[尼岡邦夫 2023年10月18日]