串本(読み)クシモト

デジタル大辞泉 「串本」の意味・読み・例文・類語

くしもと【串本】

和歌山県南端、東牟婁ひがしむろ郡の地名遠洋漁業基地潮岬しおのみさき橋杭岩はしくいいわなどの観光地がある。沿岸部は暖流影響珊瑚礁さんごしょうなど亜熱帯海域の生物がみられ、平成17年(2005)ラムサール条約に登録された。

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精選版 日本国語大辞典 「串本」の意味・読み・例文・類語

くしもと【串本】

  1. 和歌山県最南端の地名。古くから沿岸漁業でさかえ、捕鯨で知られた。現在は遠洋漁業の基地。潮岬橋杭岩大島があり、吉野熊野国立公園に属する。

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改訂新版 世界大百科事典 「串本」の意味・わかりやすい解説

串本[町] (くしもと)

和歌山県南端,東牟婁(ひがしむろ)郡の町。2005年4月旧串本町と古座(こざ)町が合体して成立した。人口1万8249(2010)。

串本町西部の旧町。旧西牟婁郡所属。1955年潮岬,有田,田並,和深の4村と合体し,58年対岸の大島村を編入した。人口1万5687(2000)。紀伊半島の先端に位置し,中心市街は潮岬のある陸繫島と本土を結ぶ砂州の上に立地している。近世の大坂~江戸の廻船ルートにあたり,砂州の西側にある袋港は廻船の寄港地として栄えたが,1940年現在のJR紀勢本線が開通して以後急速に衰えた。温暖な気候を利用して野菜,果樹の暖地栽培も行っているが,町の特色は漁業と観光である。近世からカツオ,トビウオ漁の中心となり,大正末期からはカツオ,マグロの遠洋漁業に進出した。また明治以降,第2次大戦まで,アラフラ海への真珠母貝採取船の出航地として知られた。岩礁地帯では,イセエビ,貝,海草の採取が盛んである。砂州の東側の串本港には14万m2に及ぶハマチの養殖場が造成されている。観光では,串本の市街地,黒潮の洗う潮岬の海岸美,火成岩の硬い岩脈が露出した橋杭岩,《串本節》で知られる大島,海中公園などが多くの観光客を集めている。
執筆者:

笠嶋遺跡からは弥生時代に造られた8mの船が出土しており,中世漁業史上にも潮岬会合の活動が有名である。近世の串本村は潮埼荘にふくまれ,1601年(慶長6)の検地帳によれば家数24軒,うち1軒寺,1軒神主,2軒庄屋肝煎,4軒後家部屋,16軒役人で,田畑合計17町8段5畝27歩,村高は146石4斗9升1合であった。幕末の《紀伊続風土記》によると,串本浦として村高は168石余でわずかに増加しただけであるが,家数は350軒に増加し,カツオ漁をはじめ漁業を専らとし,利益が多く,富豪のものが少なくないとしている。1867年(慶応3)には戸口が404軒,1789人に達した。漁業が中心であることは船数98隻のうち漁船が88隻で網数が98にもおよんでいることから知られる。大坂から江戸に通ずる菱垣廻船は対岸の大島を寄港地としていたが,風波の心配のある場合は重要な避難港・風待港であった。串本の海上交通のために幕末には10隻の〈イサバ〉または〈出通(でがい)船〉があり,船員6~7名が乗って,大坂などに魚類の運搬をした。臨済宗無量寺には円山応挙,長沢蘆雪の画がある。
執筆者:

串本町東部の旧町。東牟婁郡所属。人口5742(2000)。紀伊半島東部に位置し,熊野灘に面する。紀伊山地南端の山地が海岸線に迫り,低地に乏しい。古座川河口西岸に中心集落の西向(にしむかい)があり,かつて熊野街道の渡河点として対岸の古座と対向集落をなした。海岸線に沿って国道42号線とJR紀勢本線が通る。太地町とともに古くから捕鯨が盛んで,藩政時代には紀州藩の鯨方役所があった。現在はアワビ,イセエビなどの根付漁業による〈つくる〉漁業に転向している。田原川沿いの山畑では,米作,サツマイモ栽培が行われる。古座川の河口は古くからの木材,薪炭の集散地で,現在も製材業が営まれる。熊野灘の荒波が造形した荒船海岸,九竜島のある海岸線一帯は吉野熊野国立公園に指定され,観光の町でもある。
執筆者:

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「串本」の意味・わかりやすい解説

串本(町)
くしもと

和歌山県南部、東牟婁(ひがしむろ)郡にある町。紀伊半島最南端にある。1897年(明治30)西牟婁郡串本村が町制施行して成立。1924年(大正13)西牟婁郡富二橋(ふじばし)村、1955年(昭和30)西牟婁郡潮岬(しおのみさき)、有田(ありだ)、田並(たなみ)、和深(わぶか)の4村、1958年東牟婁郡大島(おおしま)村を編入。2005年(平成17)東牟婁郡古座町(こざちょう)を合併、このときに西牟婁郡から東牟婁郡に所属が変更となった。JR紀勢本線(きのくに線)、国道42号が海沿いを並行して走る。海岸部から潮岬、大島にかけては典型的な隆起海岸段丘がみられる隆起地形である。中心地区の串本は潮岬を陸繋(りくけい)した砂州(さす)上にあり、対岸の大島港とともに、古くから捕鯨で知られ、現在も遠洋漁業の根拠地、また避難港。かつお節などの水産加工や養殖漁業が盛んで、県の水産試験場もある。1999年には大島と本土が、くしもと大橋で結ばれた。旧古座町地域は木材の集積地で、製材も行われている。町域の一部は吉野熊野国立公園に含まれ、有田には海域公園がある。無量寺は長沢蘆雪(ろせつ)の絵を多く蔵し、蘆雪寺ともよばれ、境内にある串本応挙蘆雪館(くしもとおうきょろせつかん)で絵の展示が行われている。なお、串本沿岸海域は2005年に、ラムサール条約登録湿地となった。面積135.67平方キロメートル(境界一部未定)、人口1万4959(2020)。

[小池洋一]

『『串本町史』全2巻(1988、1995・串本町)』


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百科事典マイペディア 「串本」の意味・わかりやすい解説

串本[町]【くしもと】

和歌山県南端,東牟婁(ひがしむろ)郡の町。本州最南端の潮岬(しおのみさき),大島がある。本土と潮岬を結ぶ砂州上の中心市街はかつては廻船の寄港地として栄えたが,現在はマグロ遠洋漁業基地,避難港として重要。紀勢本線が通じる。〈串本節〉で知られ,潮岬,大島,橋杭岩吉野熊野国立公園に含まれる。2005年に串本沿岸海域がラムサール条約登録湿地となる。2005年4月東牟婁郡古座町を編入。135.67km2。1万8249人(2010)。

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