日本大百科全書(ニッポニカ) 「クサビフグ」の意味・わかりやすい解説
クサビフグ
くさびふぐ / 楔河豚
[学] Ranzania laevis
硬骨魚綱フグ目マンボウ科に属する海水魚。本州中部地方以南の各地、および世界中の熱帯水域に分布する。体は強く側扁(そくへん)し、やや長い。背びれと臀(しり)びれは体の最後部で対在する。真の尾びれはなく、舵(かじ)びれclavusが尾部にある。口は閉じると垂直の裂孔となる。このような口はほかの魚にはみられない。全長50センチメートルに達する。産卵期は1~3月で、卵は分離浮性卵。幼期に著しい変態をする。孵化(ふか)直後の仔魚(しぎょ)は、ハコフグの甲らに似た薄い骨性の膜に包まれている。やがて、この甲らに多数の棘(とげ)が発達し体高も大きくなり、未発達の尾びれも生じる。成長するにつれて棘は退縮し、体高は小さくなり、尾びれは消失する。マグロ延縄(はえなわ)で漁獲され、肉は食用となる。
[松浦啓一]