クラビウス(読み)くらびうす(英語表記)Christoph Clavius

日本大百科全書(ニッポニカ) 「クラビウス」の意味・わかりやすい解説

クラビウス
くらびうす
Christoph Clavius
(1537―1612)

ドイツの数学者、天文学者。ラテン名はドイツ名Klauから出たものと考えられる。イエズス派教団に属し、ローマ学院Collegium Romaumの教師であった。広く読まれた教科書『ユークリッド原論』Euclidis Elementorum Libri ⅩⅤ(1574)、『代数学Algebra Christophori Clavii(1608)を残した。彼の『ユークリッド原論』は『原論』の忠実なラテン語訳ではなく、多くの注釈を参照し、また独自の創意も加えた新編集である。中国、明(みん)版『幾何原本』(1605)は、伝道者マテオ・リッチがこの最初の6巻を講義したものに基づく漢訳にほかならない。『代数学』は当時の未知数だけ記号化されたCoss代数を出ていないが、デカルトはここから出発して独自の新しい代数をつくった。なお、グレゴリウス13世のとき、それまでのユリウス暦にかわるグレゴリオ暦を提案し、1582年より実施された。

中村幸四郎

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改訂新版 世界大百科事典 「クラビウス」の意味・わかりやすい解説

クラビウス
Christoph Clavius
生没年:1537-1612

ドイツ生れ,イタリアの数学者,天文学者。イエズス会の司祭ポルトガルコインブラ大学で学び,1565年コレージュ・ロマーノの数学の教授に就任。〈16世紀のユークリッド〉というあだ名がある。1574年,ユークリッドの《ストイケイア》のラテン語訳の校訂出版を行った。また,《サクロボスコ天球論注釈》(1581)を著した。さらに,ユリウス暦の改暦に当たっては中心的な働きをし,グレゴリオ暦策定の原動力となった。G.ガリレイの友人でもあり,自らはプトレマイオス説にくみしながらも,ガリレイの理解者の一人でもあった。

 クラビウスに直接ローマで学んだマテオ・リッチは,クラビウス版の《幾何原本》の大綱を中国に伝え,また日本に渡ったイエズス会司祭の一人P.ゴメスは,クラビウスの《天球論注釈》を基に,教科書を編んだ(邦語版は1595年完成)が,これが日本へプトレマイオス説が紹介された最初と考えられている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のクラビウスの言及

【月】より

…大きなクレーターはえぐられたように,まわりは円形の周壁でとりかこまれている。月面上で最も大きい直径230kmのクラビウスと名づけられたクレーターでは,周壁は外側で測ると4900mの高さ,内側で測ると1600mの高さである。クレーターの内部は平原であるが,その中央に山がきり立っていることが多い。…

※「クラビウス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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