改訂新版 世界大百科事典 「クロカタゾウムシ」の意味・わかりやすい解説
クロカタゾウムシ
Pachyrrhynchus infernalis
甲虫目ゾウムシ科の昆虫。黒色で光沢があり,胸脚が長い。上翅には小点刻列がある。体長13mm内外。八重山列島に分布し,スダジイなどの葉を食べるが,カンコノキに多いといわれる。幼虫は枯木中に穿孔(せんこう)する。カタゾウムシ類Pachyrrhynchusはニューギニアやフィリピンを分布の中心に,約420種が知られている。八重山列島はカタゾウムシ類の分布の北限に当たる。カタゾウムシ類は,その名のように体がきわめて堅く,また美しい斑紋をもつものが多い。後翅を欠き2枚の上翅は中央で癒着する。発達した胸脚で葉や枝の上を活発に歩行し,危険を感ずると葉の裏側や枝の反対側にすばやく身を隠す。また脚を縮めて落下する。小鳥はカタゾウムシ類の堅い体をきらって食べないといわれている。カタゾウムシ類の分布する地域には,カタゾウムシ類によく似た色彩をもつ昆虫やクモが生息するが,いずれも擬態と考えられている。
執筆者:林 長閑
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報