日本大百科全書(ニッポニカ) 「グリッロ」の意味・わかりやすい解説
グリッロ
ぐりっろ
Beppe Grillo
(1948― )
イタリアのコメディアン出身で、新興政党五つ星運動の共同創始者・指導者。本名ジュゼッペ・ピエロ・グリッロGiuseppe Piero Grillo。ジェノバ生まれ。
1970年代からコメディアンとしてテレビに出演し始め、1980年代には政治風刺で知られるようになった。しかし、1980年代後半に、テレビ番組で当時政界の実力者の一人である首相ベッティーノ・クラクシを批判したことから、公共放送から追放状態になり、舞台などに活動の場を移す。政治活動家としては、2005年にイタリア紙や英字紙に汚職批判の全面広告を出し、既存政治家を批判するV運動(「くそったれ」という俗語の頭文字に由来)を展開して注目を集め始めた。海外メディアからも一時イタリア政治の期待の改革者として取り上げられた。
政界への参入を目ざした彼は、2008年シチリア州選挙で自らの名を冠した政治勢力を立ち上げ、さらに翌2009年には五つ星運動を共同で創設して指導者となる。世界でも屈指の読者数を誇るブログを通じた影響力に加え、政治集会で有権者に直接訴えかけるスピーチも支持者の心をとらえた。
2013年の総選挙で国政でも有力勢力に躍進し、イタリア政治でもっとも有力な政治指導者の一人となった。他方で、政治家の腐敗や脱税を批判しながら瀟洒(しょうしゃ)な邸宅や高級車を保有している暮らしぶりや、苛烈(かれつ)な批判を行うポピュリスト的政治スタイルに対しては、批判や警戒も寄せられている。2018年の総選挙を前に五つ星運動の代表の座からは退いているが、依然として強い影響力を有している。
[伊藤 武 2018年6月19日]