イタリアの有名コメディアン、ベッペ・グリッロ氏が2009年10月に始めた市民参加型の政治運動。既存政党に対抗する勢力となることを目指し、インターネットで情報発信、若者を中心に支持を広げてきた。「政党」でなく党首もいないが、グリッロ氏が実質的なリーダー。13年の総選挙で躍進し、最大の野党勢力に。欧州連合(EU)には懐疑的な立場。グリッロ氏の過激な言動には批判もつきまとう。(ローマ共同)
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2009年、コメディアンのベッペ・グリッロとネット企業家のジャンロベルト・カザレッジョGianroberto Casaleggio(1954―2016)により創設されたイタリアの新興政党。略称はM5S。既成政治勢力への厳しい批判や反EU(ヨーロッパ連合)などの政治アピールから、ポピュリスト政党ともされる。
2000年代に入り、既成政党への批判からさまざまな政治運動を展開してきたグリッロは、カザレッジョとともに本格的な政界進出を目ざして2009年10月、五つ星運動を創設する。五つ星とは、党の主要目標(公共的水道、持続可能な交通、持続可能な発展、インターネットへのアクセス権、環境主義)をさす。組織としては、支持者がインターネットを通じて党の決定に参加する直接民主主義的要素を重視する。ベルルスコーニ政権の行き詰まりや、2011年以降厳しい緊縮政策を展開するモンティMario Monti(1943― )政権とそれを支える左右の政党勢力に対する批判という追い風もあり、地方選挙で首長ポストを獲得するなど全国的に躍進する。
2013年の総選挙に向けた選挙運動でも、他党がテレビメディアを重視した政治キャンペーンを展開したのに対して、同党はテレビメディアが既存政党のカルテルの影響下にあるとして、インターネット、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)と広場などでの政治集会に力点を置いた運動を行った。その結果、2013年の総選挙では、下院で僅差(きんさ)ながら最大の支持を集めた政党となった。その後も、地方選挙で堅調に地盤を広げ、とくに2016年春にはローマやトリノなど主要都市で勝利して市政を握るまでになった。2017年時点で、中道左派、中道右派に並ぶ三大勢力の一つとしての地位を確立した。
同党は、かつての若者中心・左派政党というイメージから、年金世代を含む幅広い世代、右派を含む幅広い社会層へアピールを拡大している。トリノの五つ星運動のように、従来ならば中道右派・中道左派のエリートに属していた人材も引きつけている。ただし、同党の運営がグリッロなど非議員中心の幹部組織に掌握され、候補者の自由な発言を制約するなど、党内民主主義が尊重されていないという見方もある。
2017年9月には、2018年に迫った総選挙に向けて新党首ルイージ・ディ・マイオLuigi Di Maio(1986― )のもとで、EUに対して従来の反ユーロの国民投票実施などの目玉政策でも穏健路線に修正し、財界との和解も目ざすなど、2018年総選挙での政権獲得に向けた態勢を強化した。その結果、総選挙では得票率3割を超えて、他にぬきんでる第一党へと躍進した。
[伊藤 武 2018年6月19日]
(2013-2-28)
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