日本大百科全書(ニッポニカ) 「グリーン成長モデル都市」の意味・わかりやすい解説
グリーン成長モデル都市
ぐりーんせいちょうもでるとし
グリーン成長(環境保護と経済成長を両立させながら発展すること)を成功させ、その都市政策などが他地域の参考となる都市。経済協力開発機構(OECD)が2010年から選定している。2014年3月末時点で、パリ(2010)、シカゴ(2010)、ストックホルム(2011)、北九州市(2011)の4都市が選定されている。
OECDは2010年から、グリーン成長を実現している都市の事例を広く世界に発信する「グリーンシティプログラム」を開始した。世界から地理的、経済的な環境の異なる数か所のモデル都市を選び、その都市の政策、事業、企業の取組み、市民運動、利用技術などを調査し、暮らしや他都市・国の政策への影響などを分析・検証して成功要因などを抽出。他都市の参考になる土地利用、交通、大気の質などに関する客観的政策指標の開発につなげると同時に、ケース・スタディ結果を「グリーンシティ報告書」としてまとめ、OECD加盟34か国を含めた全世界向けに公表している。新興・開発途上国などでは「環境保護は経済成長の足を引っ張りかねない」との主張が根強いため、OECDはモデル都市の選定を通じて環境保護と経済成長を両立させた具体的事例を紹介し、グリーン成長を促すねらいもある。
北九州市は1901年(明治34)に官営製鉄所(現、日本製鉄九州製鉄所八幡(やはた)地区)ができて以来、重工業都市として発展したが、1960年代から1970年代には大気や海水の汚染が進んだ「公害の街」として知られるようになった。この公害問題を克服し、リサイクル技術や再生エネルギー技術を集積した点などがOECDに評価されて選定された。2013年(平成25)5月には、北九州市の取組みをまとめた報告書「OECDグリーン成長スタディ――北九州のグリーン成長」がOECDより発行されている。
[編集部]