日本大百科全書(ニッポニカ) 「ケミカルバイオロジー」の意味・わかりやすい解説
ケミカルバイオロジー
けみかるばいおろじー
chemical biology
分子生物学的な手法と有機化学的な手法を駆使し、核酸やタンパク質などの生体内分子の機能を分子レベルで解明・理解しようとする学問領域を意味する。研究対象は有機化学に登場する小分子から生体高分子まで幅広く、それらを用いて生体機能の制御・解析や酵素反応などの生体内反応のモデル化が検討される。モデル系の機能や関連する反応を解析することにより、生物活性や薬理活性を有する分子のふるまいを分子構造と化学反応式で表すことを目標としている。ケミカルバイオロジー的アプローチが可能となった要因の一つに、酵素をはじめとするタンパク質や遺伝情報を担う核酸の分子構造を解析するための方法論が飛躍的に進歩したことをあげることができる。X線構造解析、電子顕微鏡、各磁気共鳴吸収法などの進歩は、構造生物学とよばれる分野を発展させ、これが有機化学・創薬学と融合してケミカルバイオロジーが誕生した。
[相田卓三]
『C・M・ドブソン、J・A・ジェラード、A・J・プラット著、三原久和訳『ケミカルバイオロジーの基礎――生命科学の新しいコンセプト』(2004・化学同人)』▽『半田宏編『ケミカルバイオロジー・ケミカルゲノミクス』(2005・シュプリンガー・フェアラーク東京)』▽『宍戸昌彦・大槻高史著『生物有機化学――ケミカルバイオロジーへの展開』(2008・裳華房)』