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有機化学 ゆうきかがくorganic chemistry

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

有機化学
ゆうきかがく
organic chemistry

炭素原子を含む化合物を有機化合物といい,有機化合物を研究対象とする化学を有機化学という。古くは有機化合物は動植物界にのみ存在していて,生物の生命現象によってつくられるものと考えられたので,主として無生物界にのみ存在すると考えられた無機化合物に対する用語であった。しかし現在では両者にそのような差異はなく,生物とはまったく関係のない数多くの有機化合物が合成され,衣食住など生活にきわめて重要な有機化合物が非常に多数知られている。有機化学の発展は有機化学工業の発展と相まって,他の科学,技術の発展に大きな貢献をしている。研究対象の違いによって,たとえば,天然物有機化学,化学構造と性質の間の相関性を見出そうとする有機構造化学,立体化学,有機電子論,有機反応論,あるいはこれらの理論や諸性質を利用して有用な化合物や未知化合物を合成することを研究する合成有機化学などがある。

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知恵蔵の解説

有機化学

炭素を中心として水素、酸素、窒素、硫黄などから構成される化合物(有機化合物)の構造・反応・合成などを扱う化学の分野。衣類、医薬品、高分子材料など、日常生活に深く関わりのあるものに加え、たんぱく質あるいはDNAなど生体分子の多くも有機化合物。近年では、液晶などが代表的な機能性有機材料として広く利用されている。有機化合物の種類は膨大な数にのぼり、その多様性は炭素を中心とする化学の特徴といえよう。これら多岐にわたる有機化合物を合成する方法に関わる有機合成化学、その物性や構造的な側面に関わる物理有機化学、自然界の有機化合物に関わる天然物化学、生体分子などに関わる生物有機化学など、その研究分野は大きく広がっている。

(市村禎二郎 東京工業大学教授 / 2007年)

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デジタル大辞泉の解説

ゆうき‐かがく〔イウキクワガク〕【有機化学】

有機化合物を研究対象とする化学の一分科。⇔無機化学

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百科事典マイペディアの解説

有機化学【ゆうきかがく】

有機化合物の製法,性質,反応,用途などを研究する化学の一部門。有機化合物の同定(構造決定)などを行う有機分析化学と,有機合成化学を中心に発展してきた。有機化合物の反応機構の本質を電子の行動から説明しようとするのが有機電子論
→関連項目化学クロスカップリング無機化学

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世界大百科事典 第2版の解説

ゆうきかがく【有機化学 organic chemistry】

有機化合物(主として炭素化合物)を研究対象とする化学の一分野。人間は好奇心の強い動物であり,その好奇心の対象は遠くは天空の星,近くは自分自身も含めた身のまわりの動植物に及んだ。前者への好奇心からは天文学,後者への好奇心からは生物学が誕生したが,生物を構成する物質への関心から生じた有機化学もまた後者への好奇心から生まれたものの一つである。1828年F.ウェーラーがシアン酸アンモニウムの加熱によって,生物のみに見いだされる典型的な物質である尿素を得たが,これは有機化学を一つの学問として独立させる大きなきっかけとなった。

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大辞林 第三版の解説

ゆうきかがく【有機化学】

有機化合物を研究対象とする化学の一分野。 ↔ 無機化学

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

有機化学
ゆうきかがく
organic chemistry

有機化合物の分離・確認、構造、性質、反応、合成などを研究する化学の一分野をいう。無機化学に対応することばである。「有機化合物」、「有機化学」の語は、1806年にスウェーデンのベルツェリウスが最初に使ったといわれている。その当時は、有機化合物は生物の生命力によりつくられると考えられていたので、動植物界から得られた天然の有機化合物を単離、精製して組成や構造式を決めるのが有機化学であった。1828年にドイツのウェーラーが無機化合物であるシアン酸アンモニウムから有機化合物として知られていた尿素をつくるのに成功し、「有機化合物は生物体内の生命力によらないとつくれない」という従来の考え方を打破した。

 それ以来、新しい有用な有機化合物の合成が有機化学の一つの流れとなり、ドイツのバイヤーによるインジゴなどの合成、イギリスのパーキンによるアリザリンなどの染料の合成が、すでに19世紀後半に行われ、有機合成化学の基礎が築き上げられた。その後、新しい有機化合物の合成とそれらの反応の研究が有機化学の主流を占め、糖、アルカロイド、テルペンなどの天然物の構造が合成により確定された。他方で、新規の有機化合物が合成され、天然物にみられない新しい性質、用途が開発された。これに加えて、20世紀初めから発展した量子力学に基づいた有機電子論や、スペクトルの測定などの物理的手段による有機化合物の構造と反応の研究により、有機化合物の三次元的な立体構造を完全に知ることが可能になり、有機反応のメカニズムを分子内および分子間の結合の生成と開裂により定量的に説明できるようになった。このような有機化学の分野を物理有機化学とよんでいる。天然物有機化学、有機合成化学、物理有機化学は現代の有機化学の三本柱をなしている。
 有機化学の初期の定義であった「生命力によってつくられる物質の化学」は、しだいに代謝、遺伝、病理等の生体機能の化学的解明へと発展し、現在では生物化学(生化学)として有機化学とは別な化学の一分野を構成している。[廣田 穰]
『神戸哲・高昌晨晴・斉藤光司著『わかりやすい有機化学――生体と材料のための有機化合物』(1994・講談社) ▽亀岡弘・園田昇編『エッセンシャル 有機化学』(1995・化学同人) ▽折谷隆之著『生命科学のための基本有機化学』(1996・川島書店) ▽山口良平・山本行男・田村類著『ベーシック有機化学』(1998・化学同人) ▽竹中克彦・西口郁三・山口和夫・鈴木秋弘・前川博史・下村雅人著『有機化学』(2000・朝倉書店) ▽斎藤勝裕著『絶対わかる有機化学の基礎知識』(2005・講談社) ▽斎藤勝裕著『有機化学』(2005・東京化学同人)』

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