日本大百科全書(ニッポニカ) 「ケヤリムシ」の意味・わかりやすい解説
ケヤリムシ
けやりむし / 毛槍虫
fan-worm
[学] Sabellastarte indica
環形動物門多毛綱定在目ケヤリ科に属する海産動物。三陸地方以南に広く分布する暖海性の種類で、大きな個体では体長24センチメートル、環節数170にもなる。体表から分泌した粘液で泥を固めて太い棲管(せいかん)をつくり、その中で生活する。棲管は干潮線付近の岩陰や岩の割れ目などに着生している。管の先から体の上部を出し、黄褐色に紫色の斑点(はんてん)をもった大きなえらを広げて呼吸したり、餌(えさ)をつかまえる。傘状に広がったえらが、昔、大名行列のときに使った毛槍(けやり)に似ているのでこの名がある。ケヤリムシは振動や光の明暗に敏感で、これらの刺激を受けると、えらをすばやく棲管の中に引っ込めることができるが、これは神経が太くて敏感なためといわれる。
[今島 実]