日本大百科全書(ニッポニカ) 「ケロアック」の意味・わかりやすい解説
ケロアック
けろあっく
Jack Kerouac
(1922―1969)
第二次世界大戦後の「ビート世代(ビート・ジェネレーション)」を代表するアメリカの作家。マサチューセッツ州出身。コロンビア大学中退後、第二次大戦中は商船の乗組員、戦後は鉄道員などをして各地を放浪。やがて、戦争、物質文明、虚飾の文化などに反逆する若い世代のバイブルともいわれた『路上』(1957)を発表。続く『達磨(だるま)の放浪者』(1958)は、禅、俳句、托鉢(たくはつ)の精神によって至福beatitudeの世界を求めるビート派の行脚(あんぎゃ)物語。ほかに、上記2作品と同じく自伝的要素の濃い処女作『町と都会』(1950)、ビート作家と黒人少女の恋を描く『地下街の人びと』(1958)、詩集『メキシコシティ・ブルース』(1959)など。ケロアックは、原稿の書き直しは本来自然の魂の表現を損なうとして、「自然発露的散文(スポンテーニアス・プローズ)」を提唱したが、晩年、飲酒癖が高ずるにつれ、もともと未整理な文体や構成はさらに混沌(こんとん)としたものになった。47歳で脳出血のため死亡。
[小原広忠]
『ジョン・タイテル著、大橋健三郎・村山淳彦訳『ビート世代の人生と文学』(1978・紀伊國屋書店)』