サンスクリットのパインダパーティカpaiṇḍapātikaの訳で,行乞(ぎようこつ),乞食(こつじき)などとも訳される。インドでは婆羅門(ばらもん)教などに鉢をもって在家に食を乞(こ)うことが行われたが,仏教もその風習をとり入れ,出家した僧は,厳密に定められた種々の規律に従って行乞を行い,生活の手段とした。中国や日本では主として禅宗において行われ,軒鉢(けんぱつ)と称して家ごとに喜捨を乞うていく形式と,連鉢(れんぱつ)と称して一軒一軒立ちどまることなく道を歩く様式がある。服装は法衣をまくり上げる手巾(しゆきん)と称する紐を腰に締めて袈裟をつけ,頭に網代笠(あじろがさ)をかぶり,足に白脚絆・白足袋をつけ草鞋(わらじ)をはく。経を誦したり,〈ホーオー〉と声を出し,また鈴を振るなどして,托鉢に来たことを知らせながら歩く。供養物の喜捨があれば応量器(おうりようき)もしくは頭陀袋(ずだぶくろ)を出して受け取る。一般的には明治以降禁止されているが,禅宗の専門道場で修行する雲水が行い,また雲水以外でも慈善事業を目的として行われることがある。
執筆者:竹貫 元勝
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鉢(はつ)(とくに鉄鉢(てっぱつ))を持って食物を乞(こ)うこと。乞食(こつじき)ともいう。托鉢の語は中国宋(そう)代から用いられるようになった。パーリ語、サンスクリット語ではピンダパータpiapātaといい、インドの修行者は、托鉢によって食物を得た。最初期の仏教の比丘(びく)たちは、もっぱら托鉢によって食を得たが、のちに仏教信者からの「招待食(しょうたいじき)」も受けるようになった。頭陀行者(ずだぎょうじゃ)たちは、あえて招待食を拒否し、托鉢食のみによった。現在スリランカ(セイロン)、ミャンマー(ビルマ)、タイなどの仏教国で、早朝托鉢をする黄衣の僧たちの姿がみられる。日本では、禅宗や普化(ふけ)宗などでとくに托鉢が行われ、修行の一つともみなされている。雲水(うんすい)たちは、托鉢をしながら諸国を行脚(あんぎゃ)し修行に励む。
[阿部慈園]
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[日本]
こじきは地方によりコジキ,モライ,カタイ,ホイト,カンジン,ヘンドなどをはじめ実にさまざまの呼び名がある。ただしコジキの呼び名がもともとは仏教僧の托鉢(たくはつ)を意味する乞食(こつじき)からきているように,その多くは本来の意味からの転用である。したがって,こじきの範囲は今日一般に考えられているよりもはるかに広く,そのさかいめもあいまいであった。…
※「托鉢」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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