中国で禅僧が行雲流水のごとく天下を遊行することをいい,これを唐宋音で読んだものである。僧は本来無一物となって一所不住の頭陀抖擻(ずだとそう)すべきものであるから,修行時代の禅僧はいわゆる雲水となって,行脚しなければならない。その間に明師に会えば,僧堂会下(えか)に一時とどまることもあるが,そこに定住することは許されない。その行脚には直綴(じきとつ)を着て脚絆,草鞋をつけ,頭陀袋または三衣(さんね)袋を肩に掛け,鉄鉢(てつぱつ)をささげて大きな檜笠をかむる。手に錫杖を持つこともあるので,道元は〈はじめて発心求道をこころざす。瓶錫(びようしやく)をたづさへて行脚し〉(《正法眼蔵》行持)とのべている。これをまた一杖一笠の行脚ともいう。しかし禅僧の場合は大悟徹底が目的であるから,行脚は歩々これ道場の修行であった。併せて樹下石上に宿して心身を鍛え,煩悩(ぼんのう)を滅却して解脱を期した。行脚の間の生活の資は托鉢によって得たので,僧堂では今も雲水は日を定めて行脚托鉢する。
→雲水
執筆者:五来 重
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仏教僧が一定の寺院にとどまることなく、広く仏道の師友を求め、また教化のために諸国を遍歴(へんれき)すること。遊行(ゆぎょう)、遊方(ゆほう)と同義。求法証悟(ぐほうしょうご)(仏教を求め、悟ること)を目ざし、人情を脱し煩悩を断つため、広く山川を巡って参禅聞法したり、あるいは大衆に布教する仏道の実践で、おもに禅宗における修行方法である。このような修行者を行脚僧といい、また行雲流水に例えて雲水(うんすい)ともいう。行脚は、所定の修行期間を除いた解間(げあい)という時期に、頭陀行(ずだぎょう)の精神に基づく一定の規矩(きく)のもとに行われた。転じて、俳人たちの諸国旅行のことをもいう。
[石川力山]
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…また,雲水僧の略で,雲のごとく定まった住所もなく,水のごとく流れゆきてよる所もないように,諸方の禅師を訪ねて遍歴し,道を求める修行僧をいう。雲衲(うんのう),行脚(あんぎや)とも称す。雲水は,網代笠(あじろがさ)をかぶり,袖の長い雲水衣(直綴(じきとつ))をきて,腰に手巾(しゆきん)と称する丸ぐけの腰紐をしめる。…
…遊行は,本来修行僧が衆生教化と自己修養のために諸国を巡歴することで,仏教の修行の主要なものの一つであった。飛錫,巡錫などの語でもあらわし,禅宗では行脚の語を多く用いる。平安時代には山野を抖擻(とそう)する聖(ひじり)があらわれ,修験道では遊行が重んぜられた。…
※「行脚」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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