1950年代後半から1960年代初頭にかけて、ニューヨークのグリニジ・ビレッジ、およびサンフランシスコのノース・ビーチに登場した一群の作家、詩人たち。アレン・ギンズバーグの詩集『吠(ほ)える、その他』と、ケロアックの小説『路上』との出版により文学運動として顕在化し、この2人がビート派の中心人物となる。ビートということばには「打ちのめされた」と「至福」という二重の意味が込められているように、彼らは競争と管理を旨とする社会に耐えられず、放埒(ほうらつ)な生活と行動によって解放感を得ようと努めた。そのために禅、麻薬、ジャズなどを用いたビート運動は、アメリカ社会に対する抗議とともに、そこからの離脱を目ざす社会運動でもあった。
文学表現としては、当時支配的だったモダニズムの抑制や秩序志向に反発し、内なる自我を無制限に解放する方向を目ざした。W・ホイットマンの伝統に連なり、フランス超現実主義に親近性があるとみなしうる。H・ミラー、メイラー、W・C・ウィリアムズらの先輩たちにも励まされた。詩人としてはギンズバーグのほかにコーソ、スナイダーら。『裸のランチ』(1959)の作家ウィリアム・バローズは、独自の立場ながらビート派に属すると目される。ビート派の作品を出版したシティ・ライツ社の社主ファリンゲッティは、ビート派のスポークスマン的存在。
[村山淳彦]
『ジョン・タイテル著、大橋健三郎・村山淳彦訳『ビート世代の人生と文学』(1978・紀伊國屋書店)』▽『諏訪優著『ビート・ジェネレーション』(1980・紀伊國屋書店)』
「ビート・ジェネレーション」のページをご覧ください。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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