ゲイ・ライツ・ムーブメント(その他表記)gay rights movement

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 の解説

ゲイ・ライツ・ムーブメント
gay rights movement

同性愛者(→同性愛)の人権を求める社会運動。日本におけるゲイの語は男性の同性愛者のみをさすが,英語の gayは女性も含むため,ゲイ・ライツ・ムーブメントは男女両方の同性愛者の権利運動をさす語である。しかし,もともとその運動のなかには両性愛バイセクシュアル)やトランスジェンダーも存在しており,実質的には LGBTなど性的マイノリティ全体の運動といえる。アメリカ合衆国では,1969年6月28日に起こったストーンウォールインの反乱 Stonewall riotsが,この運動の歴史的な転換点とされる。この反乱は,同性愛者やトランスジェンダーなどが集まるバーへの警察の手入れに対する抵抗から始まった暴動であり,これをきっかけにアメリカ全土でゲイ・ライツ・ムーブメントが盛んになった。ストーンウォールインの反乱を記念してその 1年後に行なわれたパレードが,今日世界で LGBTなど性的マイノリティが,法的権利の獲得や,差別偏見払拭などを目指して行なっているプライドパレードの始まりである。そのため,欧米では 6月をプライドマンス Pride Monthと呼び,性的マイノリティのパレードは 6月に行なわれることが多い。日本では 1970年代末から 1980年代に,東京,大阪名古屋などの大都市でゲイやレズビアン自助グループが形成され,それが日本でのゲイ・ライツ・ムーブメントの始まりである。1984年に発足した国際レズビアン・ゲイ協会 ILGA日本支部,1986年に発足した「動くゲイとレズビアンの会」(アカー)などが,エイズ予防法への反対などをきっかけに社会に向けて同性愛者の権利を訴え,本格的なゲイ・ライツ・ムーブメントを展開するようになった。

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知恵蔵 の解説

ゲイ・ライツ・ムーブメント

ホモセクシュアルを差別したり、違法とした法律の撤廃を掲げ、その人権拡大、市民権獲得を求める運動。ゲイ・パワー、ゲイ・リベレイションとも呼ばれる。ゲイ解放運動を側面から支えたのがカウンター・カルチャーやブラック・パワー、ウーマンリブといった、1960年代以降のマイノリティーの権利主張運動であるとすれば、それに弾みをつけたのは米国精神医学協会が75年に下した、精神障害リストから同性愛を外す、との決定であった。やがて多くの州、市が、同性愛者の差別を不可とする法律を成立させるに至る。ゲイのライフスタイルを容認させる運動は、エイズ蔓延(まんえん)によって一時的後退を余儀なくされるが、エイズウイルス(HIV)感染者の人権をめぐる運動や、政府のエイズ対策への抗議行動を通じて高められたゲイの政治意識は、結局はゲイの権利要求闘争を活性化する方向で作用した。有権者数はヒスパニック系のそれに匹敵するといわれる。2003年6月26日、連邦最高裁判所は、性的少数者をめぐる社会通念の変化を受けて、同性愛者の性行為を犯罪行為としたテキサス州法を違憲であり無効である、との決定を下した。

(井上健 東京大学大学院総合文化研究科教授 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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