精選版 日本国語大辞典 「同性愛」の意味・読み・例文・類語
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その性的指向sexual orientationが同性にあること、すなわち同性に対して性的感情を抱くこと。同性愛者をホモセクシュアルhomosexualというが、これは1869年にハンガリーの医師ベンケルトがつくったことばで、医学の分野でよく使用される。同性愛者自身は男性同性愛者のことをゲイgayもしくはゲイマンgay man、女性同性愛者のことをレズビアンlesbianという。ゲイは広く男女の同性愛者を指して用いられることもある。
同性愛は古今東西を問わず、あらゆる文化圏や民族集団にみいだされるが、その位置づけは時代や地域によって大きく異なる。
ユダヤ―キリスト教的価値観のなかでは、生殖を伴わない性は罪悪としてとらえられ、同性愛もその中に含まれた。近代国家の出現により教会の権威が失墜するに従って、同性愛に対する宗教的嫌悪は世俗法に引き継がれ、同性愛者は死刑を含む過酷な処罰を受けた。
19世紀後半に同性愛の医学的研究が始まった。これは、当時同性愛を刑法上の犯罪としていたドイツにおいて、同性愛者の精神鑑定が精神科医に委託されたことによる。フロイトによる精神分析学の確立により、同性愛はもっぱらその枠内で語られるようになった。フロイト自身は、同性愛は病気に分類されるものではないことを明言しているが、その後の分析家は同性愛を疾患としてとらえ、さまざまな病理モデルを提出した。
第二次世界大戦後、1960年代後半から顕在化した同性愛者解放運動の基礎となった諸団体が結成され、ホモファイル運動を展開した。この動きの中でアメリカの心理学者フッカーは、同性愛男性と異性愛男性の投影法検査を行い、両者の適応水準に差がないこと、検査結果から両者を区別することはできないことを明らかにした。同性愛者自身による権利獲得運動と同性愛の病理モデルに疑問を唱える研究者の出現により、同性愛の脱医学化が始まったのである。このことはアメリカ精神医学会の公式診断分類である『精神障害の分類と診断のための手引き(DSM)』の変遷に表れている。1968年出版の第2版までは、同性愛は精神障害に位置づけられていたが、1973年にアメリカ精神医学会は同性愛を分類から削除することを決定し、1987年の第3版改訂からは「同性愛」という用語はいっさい使用されていない。DSMに影響を受けた世界保健機関(WHO)の国際疾病分類(ICD)においても、1990年に承認された第10版には独立した「同性愛」の項目はない。このように現代精神医学においては、同性愛は疾患とはみなされていない。
しかし、社会のルールやシステムは、すべての人が異性愛者であることを前提にしてつくりあげられており、同性愛者の存在は無視されている。これは異性愛主義heterosexismとよばれている。また、社会には同性愛に対する誤解と偏見が満ちあふれており、その結果、同性愛を変態、あるいは悪趣味と蔑視(べっし)し、嫌悪感を抱く人もいる。この根拠のない不合理な同性愛者への否定的感情は同性愛嫌悪homophobiaとよばれている。異性愛主義と同性愛嫌悪が蔓延(まんえん)する社会において、同性愛者は自らの性的感情に適切なことばを付与することに大きなとまどいと不安と抵抗を感じている。これらの困難を乗り越えて肯定的なゲイアイデンティティ(同性愛者としての自己同一性)を確立していく過程をカミングアウトプロセスという。
アメリカにおいては、肉体的・言語的暴力の対象となりやすい同性愛者を援助するために、「プロジェクト10」とよばれるカウンセリングサービスと教育プログラムが各地の学校で行われ、成果をあげている。
[濱田龍之介]
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…昔とはことなり今日あらゆる種類の性的前戯は異常とはふつうみなされないが,それらが性感獲得のための最上の手段となっている場合は,それが個人のもつ心理的困難のなんらかの反映である可能性は否定できず,フェティシズム,服装倒錯,動物性愛,小児愛,露出症,窃視症,性的マゾヒズム,性的サディズムなどがふつうその質的異常とみなされる。同性愛もこの範疇に入るが,同性愛にもこの傾向にみずから悩まない自我親和的な同性愛と,この傾向に悩み異性愛への転向をつねに望む自我違和的なものとがある。今日のアメリカの精神医学界は,後者のみを治療の対象になるものと考え,前者は精神障害とはみなさない立場をとっている。…
…プラトンのエロスは確かに男女の愛を含むものであったが,そればかりではなく,ともに真理を探究することによってイデアの世界に達しようとする師弟間の愛なども含んでいた。〈プラトニック・ラブ〉の本来の意味は今日の同性愛であるといわれる。 一方,キリスト教は,このようなヘレニズム的世界の性思想や,ユダヤ教を含む先行諸宗教の性思想を,快楽主義と批判して,夫婦間の性交だけをよしとするパウロの主張を教会の教えとして確立するにいたる。…
…歴史的に性対象の異常とされてきたものには,以下の行為がある。自分自身の肉体を性対象とするオートエロティズム(ナルシシズム),自分と同性を対象とする同性愛,性的に未熟な幼児を対象とする幼児性愛(ペドフィリアpedophilia),老人を対象とする老人性愛(ジェロントフィリアgerontophilia),死体を対象とする屍体性愛(ネクロフィリアnecrophilia),動物(獣,鳥など)を対象とする動物性愛(ゾーフィリアzoophilia,これにもとづく行為が獣姦=ソドミーsodomy),フェティッシュと呼ばれる物品や肉体の一部を性愛の対象とするフェティシズム,親子・同胞と交わる近親相姦など。一方,性目標の異常としては,露出症,窃視症(voyeurism,いわゆる〈のぞき〉),サディズム,マゾヒズム,異性装症ないし服装倒錯(トランスベスティズムtransvestism)などがあげられてきた。…
…男性の同性愛。〈だんしょく〉とも読む。…
…彼らは100人余りでアモク村に住んでおり,他のマレクラ島民とは異なりカバを飲む習慣があり,割礼を行う。また同性愛が社会的に承認されており,同性愛者は政治的に高い地位につくことができる。スモール・ナンバスは死者の頭骨を利用して死者に似せた像を作ることで知られている。…
※「同性愛」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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