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差別 さべつdiscrimination

翻訳|discrimination

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

差別
さべつ
discrimination

特定の個人や集団に対して正当な理由もなく生活全般にかかわる不利益を強制する行為をさす。その差別的行為の対象となる基準は自然的カテゴリー (身体的特徴) の場合もあれば,社会的カテゴリー (所属集団) の場合もあるが,いずれにせよ恣意的な分割によって行われる

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デジタル大辞泉の解説

さ‐べつ【差別】

[名](スル)
あるものと別のあるものとの間に認められる違い。また、それに従って区別すること。「両者の差別を明らかにする」
取り扱いに差をつけること。特に、他よりも不当に低く取り扱うこと。「性別によって差別しない」「人種差別
しゃべつ(差別)

しゃ‐べつ【差別】

さべつ(差別)」に同じ。
「世のために益あることは躊躇(たゆた)うことなく為し、絶えて彼此(かれこれ)の―なし」〈樗牛滝口入道
仏語。万物の本体が一如平等であるのに対し、その万物に高下・善悪などの特殊相があること。

出典|小学館
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大辞林 第三版の解説

さべつ【差別】

( 名 ) スル
ある基準に基づいて、差をつけて区別すること。扱いに違いをつけること。また、その違い。 「いづれを択ぶとも、さしたる-なし/十和田湖 桂月
偏見や先入観などをもとに、特定の人々に対して不利益・不平等な扱いをすること。また、その扱い。 「人種-」 「 -待遇」
〘仏〙 「 しゃべつ(差別) 」に同じ。

しゃべつ【差別】

〔「しゃ」は呉音〕
〘仏〙 平等に対して、それぞれの物が異なる独自の仕方で存在している姿。さべつ。
区別すること。 「人我にんがの-も分り憎くなる/風流仏 露伴

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

差別
さべつ
discrimination

差異や種類別によって分けることが区別distinctionであるが、これをもっと狭く限定した概念が差別である。しかし現在、差別とはなんであるかという定義がまちまちであり、多くの場合、たとえば法律の分野においてさえも、差別と区別は使い分けられていない。この結果、反差別運動において差別という概念が恣意(しい)的に用いられ、運動が情緒に流れやすいのも無理はない。こうした混乱はしばしば極度の緊張をもたらすが、同時に、差し迫った差別の解消、社会的関心の喚起、および差別理論の解明などを促進する側面をももっている。以上を踏まえて、ここでは差別を次のように規定する。[鈴木二郎]

差別とは何か

人間は生まれながら心身両面にわたってきわめて大きな可能性を潜在的にもっており、この可能性を自ら伸ばそうとするのは、人間の本性である。こうした可能性を実態化することによって、より有利な条件を獲得しようとする個人または集団の行為を、その個人または集団に付随する特性、または架空につくられた特性に基づいて他者が阻止する行為、これが差別である。
 こうして、差別のよりどころないし口実とされる特性には、自然的カテゴリーとして、性、年齢、身体的特徴ないし人種、心身障害などがあり、社会的・歴史的カテゴリーとして、出自、民族、国籍、身分、宗教、言語、社会的地位、貧富、職業、学歴、思想などがある。この両カテゴリーは分析的には区別されるが、たとえば障害者差別や人種差別にみられるように、自然的カテゴリーは、それが現実の歴史的社会に作用するときには、社会的・歴史的カテゴリーとして機能している。また実在しないにもかかわらず、たとえば特定集団の残虐性、犯罪性、劣等な知能というような形で、架空に、しばしば政治的につくられるカテゴリーがあり、これがときには生命や生存を脅かす重大な差別に通じている。こうした差別の仕組みを女性とユダヤ人についてみるならば、その大部分は個人の資質や能力とは無関係に、ただ女性でありユダヤ人であるというだけの理由で、生存、教育、結婚、就職、政治参加などに関する諸権利を制限ないし剥奪(はくだつ)され、男性や非ユダヤ人に比べて不利益な扱いを受けるのである。[鈴木二郎]

差別の形態と構造

差別の種類は、個人が個人を口頭でからかうものから、公共施設やホテルの利用、交際、居住、結婚、選挙権の制限、および集団が集団を殺害するジェノサイドgenocideに至るまで、非常に多い。分類の仕方、または程度の違いに応じて、差別はほとんど無数に存在する。差別の多くは現象的には私人間の私的な行為に示されるが、こうした私的な差別も基本的には、社会的威圧、道徳、法律などに制度化されている差別と結び付いている。一般に、個々の諸差別の間には連鎖的なつながりがあるが、その関係は平面的につながっているだけではなく、重層的に重なり合って、一つの集団ないし社会を構成している。すなわち、個人であれ集団であれ、人は普通、ある面では差別する立場にあり、同時に別の面では差別される立場にたっている。しかもこの差別・被差別の関係は状況に対応して変わっていく。たとえば在米日系人の男性の多くが、白人から差別されると同時に、女性、とくに同じ日系人の女性や、在米の東南アジア人ないし黒人を差別するというように。したがって、個人または集団を差別者・被差別者という単純な二項対立で固定的にとらえるのは一面的な見方である。
 こうして複雑に絡み合っている諸差別の間に重要度の違いはあるのかどうか。これについては、差別される当事者による解決への要求度、および、当該社会の構成員が解決の緊急性について下す一定の選択と決定を通して、特定の差別の解決が重要だとされるのは当然である。しかしその重要度は歴史的、相対的なものであって、個々の差別それ自体の間には本質的には重要度の違いはない。いかなる差別も、人間の尊厳さの否定、ひいては人間存在の否定という点において、本質的に同じだからである。
 次に諸差別間の関係を構造的にはどのようにとらえることができるか。諸差別のなかで本質的な差別は階級的差別であり、他の差別は副次的差別として階級的差別を維持し補強する役割を演じている、という見解については、多くの議論が交わされている。確かに階級社会では階級関係に基づく差別、すなわち階級的差別は諸差別のなかで中心的な役割を演じている。しかし、言語、宗教、民族などは階級関係との間に相対的な自律性を保ち、これらをめぐる差別は階級的差別によって全面的に規制されるものではない。さらに人類史の99%以上を占めていた無階級状態を保っているのが現存の未開社会であって、ここには、さまざまな差別はあるが、階級的差別はない。階級にかわるものは共同体ないし共同社会の社会組織である。これらの理由から、階級的差別を諸差別の本質だとする見解は、事実に反し、科学的ではない。[鈴木二郎]

差別を不当とする潮流

前述のとおり、人間のもつ可能性を他者が阻止する行為が差別であるが、そこには普通、阻止しようとする他者の意図が働いている。しかしそうした意図が自覚されていない場合にも差別は成立する。たとえば、制度化した差別が強固な社会では、差別は日常化し、この状態が繰り返されるなかで、差別は大部分の人にとって意識されなくなる。日本における天皇・皇族・華族・士族・平民の系列に起因する身分差別は、かつては多くの人にとって差別として意識されなかったのである。
 差別が多くの人によって、今日理解されている内容のものとして意識され、不当なものだと自覚されるようになったのは、人間平等および基本的人権の原理が歴史の舞台で重要な働きをするようになった近世以降のことである。それ以降、ようやく差別をなくそうとする新しい潮流が生まれた。この潮流は今日、きわめて不十分な内容ではあるが、国際的には国連憲章、人種差別撤廃条約、女性差別撤廃条約などに反映し、各国の基本法や個別法にも反映している。とくに日本国憲法をはじめとして多くの国々の基本的人権に関する法律条項には、少なくともたてまえとしては差別を不条理とする態度が明示されている。日本の地域改善対策特別措置法(1982)、イギリスの人種関係法(1965、68、76)、アメリカの公民権法(1957、60、64、65)などの個別法は、実施面での抜け穴をたくさんもってはいるが、一定の効果をあげている。これらに先んじて、ソ連(現ロシア連邦)、中国などの少数民族政策やインドの不可触民優遇政策が、自由の原理については大きな弱点をもつとはいえ、平等の原理と差別解消を一貫して追求している。
 これらの制度に基づくさまざまな行政措置は、古くからの歴史的潮流を逆転させようとするものである。その意味で、被差別者の不利な状態を改善するために被差別者を優遇する積極行動affirmative actionは、逆差別reverse discriminationないし積極的差別positive discriminationともよばれる。逆差別という用語は、日本では諸外国と違って、行きすぎた優遇措置という意味で使われている。このように被差別という点から特定の個人ないし集団を選別して優遇することと、これによって不利益を被る者に対しても法的に保障されているはずの平等原理との間に矛盾があるとして、これをどのように調整するかが最近大きな問題になっている。これは理論上の問題にとどまらず、アメリカで頻発している法廷闘争では、諸判決が揺れ動いている。
 今日、差別解消の潮流はすでに逆流しえない状況になっている。しかし、制度上の改善の効果は不十分ながらあげられているが、私人間の差別解消の歩みはそれよりもはるかに遅れている。いまはまだ問題の全面的解決の見通しをたてることはできない。[鈴木二郎]
『A・メンミ著、白井成雄・菊地昌美訳『差別の構造』(1971・合同出版) ▽今野敏彦著『見えざるこころ――脱差別論への試み』(1981・マルジュ社) ▽鈴木二郎監修『現代の差別と偏見』(1969・新泉社)』

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