改訂新版 世界大百科事典 「ゲルドロード」の意味・わかりやすい解説
ゲルドロード
Michel de Ghelderode
生没年:1898-1962
ベルギーの詩人,劇作家。本名アドルフ・マルタンAdolphe Martens。作品のほとんどは第2次大戦以前に書かれた。処女作《死は窓辺にのぞく》は,1918年ブリュッセルで上演された。フラマン民衆劇場の座付作家となり,28年《バラバス》が上演された。フランスではオータン・ララ夫人の芸術行動実験室によって,1928-29年のシーズンに,《ファウスト博士の死》と《クリストファ・コロンブス》が紹介された。しかし彼の名声がパリで確固たるものとなったのは,代表作《エスキュリアル》(1948),《地獄の狂宴》(1949)の上演で宗教上のスキャンダルとなって以来のことである。彼の描いた悪夢の世界は,アルトーの残酷演劇と共通するものがあり,ブリューゲルやH.ボスらのフランドル絵画の幻想的な世界の再現であるともいえよう。1950年代前衛劇の隆盛とともに,ゲルドロードの名は,前衛劇の先駆者として再評価されつつある。
執筆者:利光 哲夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報