改訂新版 世界大百科事典 「コルヌコピア」の意味・わかりやすい解説
コルヌコピア
cornucopia
ヨーロッパの装飾モティーフ,図案の一つ。〈豊穣の角〉と訳され,一般に花と果物に満たされた角の図柄で表される。富と安寧を象徴し,〈幸運〉〈勝利〉そして〈平和〉のおのおのの女神や河神の持物でもある。コルヌコピアはギリシア神話の挿話に起源をもつ。最高神ゼウスは幼児期をクレタ島のイダ山で過ごし,角のある牝ヤギ,アルマテイアが豊かな乳で彼を養った。あるときゼウスは,アルマテイアと遊ぶうちにその1本の角を取ってしまったが,後にこの牝ヤギを星座の磨羯宮に祭り,残された角には穀物,黄金の花冠,果物,宝玉を湧き出す神秘な力をさずけて,イダ山の妖精たちに贈った。アルマテイアは力と強さという男性的象徴としての角と,養育する女性の象徴としての牝ヤギが合体したものであり,また,角の形体自体,外形と空洞の内側とに両性具有的豊饒性を具現している。独立した装飾モティーフとしても古くからよく用いられ,エトルリアの宝石類やフランスのルイ16世時代の建築装飾,家具にもみられる。
執筆者:友部 直
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報