改訂新版 世界大百科事典 「サカマキガイ」の意味・わかりやすい解説
サカマキガイ (逆巻貝)
bladder snail
Physa acuta
サカマキガイ科の左巻きの淡水産巻貝。殻は高さ12mm,太さ6mmくらい,黄褐色半透明で光沢がある。巻きは7階で小さく,円錐形で最後の巻きは大きくて膨らむ。軟体は黒みがかり,頭に細長い触角があり,その基部に眼がある。外套(がいとう)膜は殻の口から殻表上に広がり,指状の突起がある。雑食性で肉質のものも食べるため,鋭くとがった歯舌をもっている。ゼラチン質の卵塊を水草などの上に産む。ヨーロッパの原産であるが,日本へは熱帯魚を飼う水槽に入れる水草について移入されたらしいが,1940年ころより急に国内に広がり,今では北海道から沖縄まで全国に見られる。汚れた溝や川の石,コンクリート壁に付着している。右巻きのヒメモノアラガイに似ていて,水質に対する適応範囲が広く,汚水にもよく耐えて,従来ヒメモノアラガイのすんでいたこの水域にも侵入して優占種になっている。
執筆者:波部 忠重
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報