日本大百科全書(ニッポニカ) 「サトレジ川」の意味・わかりやすい解説
サトレジ川
さとれじがわ
Sutlej
インド北西部を流れ、インダス川五大支流のうち、もっとも南を流れる川。中国チベット自治区南西部にあるランガツォ湖に源を発し、西流したのちインド領に入り、ヒマラヤ山脈を横断して南西に約200キロメートル流下し、ルパールでパンジャーブ平原に出る。ヒマラヤ山脈は、この川によって東のクマオン・ヒマラヤと西のパンジャーブ・ヒマラヤに分けられる。ルパールから西へ約150キロメートル流れてビアス川と合流し、パキスタン領に入り、アリプル付近でチェナブ川をあわせたのち、インダス川に合流する。全長1450キロメートルで、五大支流中最長、流域面積は6万平方キロメートルを超える。パンジャーブ地方の五大河川の一つで、氷河を源にもつため水量が豊富であり、歴史的にこの地方の灌漑(かんがい)に大きな役割を果たしてきた。流域にはダムや灌漑用水路が多く建設され、バークラ・ナンガル総合開発計画によるバークラ・ダム(1954建設)やパンジャーブ州東部のシルヒンド水路は規模が大きい。インド、パキスタン両国を流れるため、1960年に両国の協定が成立するまでサトレジ川の水利用をめぐって紛争が絶えなかった。
[成瀬敏郎]